盛岡タイムス Web News 2011年 12月 4日 (日)

       

■ 〈詩人のポスト〉金野清人 故国の冬 

金野清人(盛岡市)
  故国の冬
 
木枯らしが里山を駆け降りると
山峡の部落は
ひっそりと冬籠もり
 
満州の戦禍を逃れ
命からがら故国に辿り着いたボクは
戦火を被ったシューバを脱いで
祖母の縫ったドンブグに早変わり
 
綿のたくさん入った
ふるさとの
温かな綿入れ半纏だ
 
それは雪花の舞う内地の匂いがする
囲炉裏で炊いている麦飯の匂いがする
 
五葉颪に逆らって
水っ洟を垂らした腕白たちは
ドンブグの袖をつかんで
バッタバッタと面子打ちに無我夢中
おなごわらしは馬屋の周りで
カグレマッコに興じて大はしゃぎ
 
軒先を見上げると
夜なべで剥いた干し柿の玉すだれ
むしろに干した皮を
腹を空かした勝負師たちはつまみ食い
キッキノキの掛け声は
泣き虫が出るまで止まらない
 
里山にとっぷりと日が沈み
夕餉の煙が山峡の部落に立ち込めると
童らは草履を突っ掛け
蜘蛛の子を散らすように
息急き切って駆けていく
 
ワッパガの待っている茅葺きの家へ
夜なべに勤しむほのぼのとした家族の下に
      ◇    ◇
  カグレマッコ‖かくれんぼ
  キッキノキ‖じゃんけんをする時の掛け声
  ワッパガ‖割り当てられた仕事
(ケセン語)

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