盛岡タイムス Web News 2011年 12月 9日 (金)

       

■ 〈胡堂の青春育んだ書簡群〜学友たちの手紙〉54 八重嶋勲 兄の元に余が言海あらなん

 ■青柳糸葉

  81巻紙 明治35年5月23日付
宛 東京本郷区台町三六 東北舘 野村長一様
発 和賀郡笹間村 青柳糸葉 (高橋)
 
啓上
杜陵の里に袂別以来の辞を交へしも早や一年の昔とはなりぬ、其間雪は降り花開きて年あらたまりぬれど共に進みかねたるは余が身の上なり、兄には杜陵中学を卒るご名誉の錦衣て郷里に帰り親はしき父母のよろこびを見しならん、其時の兄が胸中察するにあまりあり、
今後兄には如何なる方針を取らんとなす(し)つゝあるや出來得べくんば余が耳に入らしめよ、
余は茲に実業的慈善事業を起さんとす、
宮川氏は今何處にかある、彼は猶ほ東都の空に圖書舘出身学者とならんとなす(し)つゝありや、
時節柄とは云ひ暑さも二三日前から餘程昇て来た様だ、四方の森林も青葉に包まれそめた、何でも近い中には夏になるならんか、茅屋暑さを凌ぐに不適当なれど、談論も一の避暑の内なれば、君か得意の膝栗毛に鞭をあたられ御来訪あれかし、
兄の元に余が言海あらなん、又他の二三の書冊も、之等は何にもつかぬものなれど、余とてもなからねばならぬもの故、近き中に御郵送くなされたく候、
言海は殊に当村夜学会開け居り候為め是非必用(要)に御座候へば、何卒何卒至急否、紙面着次第御送附方願上候、
小生さても目的なき田舎僕になり終るにもあらねば、小生上京中貸上候書籍是非是非御送附被下度願上候、先づは氣候伺旁々用事まで乱筆
五月廿三日
  高橋拝
野村大兄
    まゐる
病中のことゝて床上認めたれば御推読を乞ふ、乱筆は天性なれど又甚だしからなん、
 
  【解説】封筒の差出人「青柳糸葉」とは誰か。手紙の書き主「高橋拝」と封筒の住所から推察すれば、盛岡中学校の同期生「高橋文蔵」ではないかと思われる。(盛岡一高同窓会名簿に、高橋文蔵の本籍和賀郡笹間村中笹間四とある)
  長一と同時に卒業して上京。長一と交流があった様子である。その時貸した大槻文彦編「言海」外2、3冊の書籍を請求している手紙である。

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