盛岡タイムス Web News 2012年 2月 14日 (火)

       

■ 〈大震災私記〉116 田村剛一 下水の氾濫

 家屋の解体が進み、がれきが撤去されるにつれ、半壊家屋の周辺の生活環境も改善されてきた。

  ところが、季節が進むにつれ困ったことが起きた。私たちの住む後楽町(元寺小路)は、坂道になっていて、大雨の時は、寺山から土砂が流れてくる。

  下水道(側溝)が整備されてからは、側溝から水があふれるということはなくなったが、津波後、ちょっとした雨でも側溝から水があふれ、道路を水浸しにした。側溝に土石やがれきが詰まっていて、水の流れを悪くしていた。それが原因で、少々の雨でも水が道路にあふれ、再び土砂、がれきが散乱した。

  周りの人たちと相談して「ボランティアに頼んでみよう」ということになった。それぞれの家でボランティアに頼み、個人宅の側溝の泥上げ、がれき撤去は終わっていた。家の周りの水の流れはよくても、町道の側溝でせき止められ、道路が水浸しになっていたのだ。

  ボランティアセンターに電話を入れると「公共の下水道には、手をつけられないことになっています」と言われ断られた。ボランティアが公共のものには手がつけられないということを聞いたのは初めて。

  でも、このまま放置したのでは、気温が高くなるにつれ、悪臭が出たり、ボーフラがわいたりして、環境の悪化が心配される。

  現に「田村さん、いやな臭いが最近しませんか」と言われてもいた。

  早速役場に行き、早く公共の下水道(側溝)の泥上げをしてくれるよう頼んだ。今まで側溝の清掃は、町内会の人たちの手で行っていたが、その人たちの大部分は家が流され避難所生活。それに、その時使った清掃道具もなければ、土砂、がれきの量がいつもの時とは桁違いに多く、住民の素手で撤去は無理。

  役場職員に「このままだと生活環境が悪化し、病人の出る恐れもある」と言って、下水道の泥上げ、がれき撤去を早めに行うよう促した。

  返ってきた言葉は「業者にさせる予定になっていますので、少し待ってください」だった。

  思い出したことがある。町の業者から「町外の業者がはいってくると、町内業者の仕事が奪われる」。そう訴えられ、町にその話をしたことがある。

  下水道の泥上げ、がれきの撤去は、そんなこともあって、町内業者の仕事になっていたのだ。その町内業者も多忙を極め、なかなかそれまで手が回らなかった。やむなくその仕事も被災住民の手に委ねられた。生活環境を守るためにはやむを得ないこと。泥上げ作業員が姿を現したのは、それからずっと後のことである。
(山田町) 

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