盛岡タイムス Web News 2012年 2月 25日 (土)

       

■ 〈昆虫パワーをあなたにも〉20 鈴木幸一 一足早い最終講義の本音

 この1〜2年、講義というものが苦痛になってきました。先輩の教授の中には、定年退職を間近にして講義が楽しくなったと話していたのを記憶しているので、脳の活動低下を疑って心配になります。

  確かに30年以上前、講義の権利の無い助手時代(現在の助教のポスト)は、実験指導だけでは飽き足らず、講義というものに憧れて、ボードの前で口角泡を飛ばすような勢いでしゃべりまくっていました。

  それが最近では講義のたびに、新鮮さに欠けて体からエネルギーが湧いてこないのです。学生さんには申し訳ないのですが、そろそろ教授としては潮時のようです。

  ところが、講演となると話は違います。話す気になるというか、体の底からエネルギーが出てくるのです。少額でもギャラが支払われるからという訳でもないのですが、東京板橋区で講演した時は、とうとう年配のひとりの女性からおひねりがありました。

  恐らく、この大学始まって以来のことではないかと想像しています。それでは旅芸人のように、無反応な学生さんを相手にするよりも、たとえ奇跡に近くともおひねりを期待するようになってしまったのでしょうか。

  そうではないことに気が付いてきました。講義とは何冊ものテキストや原書を読んで解説するのが基本です。昔の大物教授のように、半年に15回講義するところを数回で片付けて、勝手なことを傍若無人に板書し早目に講義を切り上げ、夕方になると行きつけの居酒屋に飛び込んで行くような時代ではありません。

  15回の講義内容(シラバス)も事前に学生へ伝え、計画に基づいて講義をこなしていくのが基本でして、大方は既知の発見を解説しなければなりません。実は、科目の単位取得や定期試験・就職試験に出るからということで、教授する行為に喜びを感じなくなったのです。

  ところが、講演の方は支離滅裂でも自分たちの研究成果を束縛されずに伝えることができ、集まった人たちの注意を惹起し面白かったというレベルを目指せます。

  3月で定年退職を迎えるにあたって、最終講義が定番となっていますが、これまでの講義の型から逸脱してテキストや原書に頼らずに、自由奔放に41年間の研究成果のエキスを紹介することができます。もちろんギャラもおひねりもないと思われますが、その日は3月2日(金)です。

  (岩手大学地域連携推進センター長)

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