盛岡タイムス Web News 2012年 2月 29日 (水)

       

■ 〈大震災私記〉127 田村剛一 仮設住宅1

 仮設住宅の建設は、3月の末から始まった。この仮設住宅の建設が始まり出すと、「相談がある」と言い、私の所を訪ねて来た人がいる。

  「知人が仮設住宅に適した土地をもっている。町に借りてもらえないだろうか」という相談であった。

  「町に相談すれば、喜んで、その話に乗ってくれるよ」。山田には、仮設住宅を建設するのに適した土地がなく、それを探すのにひと苦労していた。

  4月に入ると「よそから土地あさりの人たちが入っている」といううわさが広がったが、その背景に仮設住宅の適地探しがあったようだ。

  私もそれらしい人に会ったので、「何を探している人ですか」と聞いた。すると「仮設住宅用の土地を探している」という言葉が返ってきて納得した。だから、町では土地不足で頭を悩ましているだろうから、その話には乗ってくれるだろうと思った。

  「ところで、地代はどのくらいなのでしょうかね」と聞かれたが、それには答えようがなかった。全く知らないし、聞いたこともない。

  「無償じゃないかな。あってもタダに近いと思うよ。それも役場に行って聞いてみたら」。そういって客を帰した。

  私が町の議員をしたこともあって、時々、そんな相談のあることがある。前に運送業者から「よその運送業者が入ってくると、町の業者の仕事がなくなる。なんとかしてほしい」と声をかけられたことがある。そんな心配はなかった。建設業者の仕事は山ほどあったからだ。

  相談に来た人の知人の土地が、その後、どうなったか。それから1カ月ほどして、近くを通ってみたら、そこにも仮設住宅がつくられていた。町と地主の間で、うまく話がついたのだろう。

  山田は住宅適地が少なかった。新聞で発表される土地路線価格や評価価格を見ると、盛岡周辺の土地と変わらない。それは、それだけの価値のある土地かというと、そうではなくそれだけ、宅地だけでなく商業用地も不足していたからだ。最大の原因は、山が多く、後背地に恵まれていなかったからだ。

  そんな所に、入居希望者は1900世帯、4千人もいるとなると、少なくとも、1900戸は建てなければならない。そんな土地がはたしてあるのか。この時ばかりは土地を探す職員も苦労するなと思った。

  でも、山田の町民は、独立独歩の精神が強く、仲間意識の強い人たちが多い。「無償でもよい、俺の土地を使ってくれ」。そう言いだす人たちが出てくるような気がした。そうこなくては本当の山田町民ではない。
(山田町)


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