盛岡タイムス Web News 2013年  7月  2日 (火)

       

■  〈詩人のポスト〉 「通り抜けていく」蟹澤小陽子

 

上腕を通り抜けていく熱に
日焼け止めを塗らなくては
なんて無意識に意識する
影の長さは三十センチほど
脂肪を蓄えた体を通り抜けて
水たまりに化けて足元に佇んでいる
「今日は曇りで二十度くらいの気温」
天気予報も過ちを犯す
路地裏を通り抜けていく風の
匂いに付随する感情の感触は
全て思い出の中にあって
今知覚する匂いも感触も
本質は過去の自分の経験とともに
ずるりと引き出されている
右肩を通り抜けて行った
さっきの風はほんの少し
燻されていたけれど
はて どこかで出会った匂いだろうか
振り返れども所詮姿なき昔人
運命ならば再びどこかで出会うのだろう


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします