盛岡タイムス Web News 2013年  7月  3日 (水)

       

■  〈口ずさむとき〉340 伊藤幸子 「御堂関白記」


  あしたづのよはひしあらば君が代の千歳の数も数へ取りてむ
                                         藤原道長

 6月20日の新聞に「国宝2件 記憶遺産に」との大きな記事が掲載された。ユネスコの記憶遺産に、「慶長遣欧使節関係資料」(仙台市博物館資料)と藤原道長の自筆日記「御堂関白記」の国宝2件が登録されたというものである。

  記憶遺産は1992年にユネスコが創設。「真正」「世界的に重要」「唯一」などの要素を満たすかどうか、専門家らが2年おきに審査し、ユネスコが最終決定するもので、世界遺産、無形文化遺産と並ぶ三大遺産事業とされている。

  その「御堂関白記」に私は感動の声をあげた。先月、平泉の「曲水の宴」の際、参宴者には毛越寺の近くのホテルが用意され、懇親の場が持たれた。宮中歌会始の講師(こうじ)をなさる近衛忠大さま、坊城俊在さまはじめ殿上の皆さまと咫尺(しせき)の場でお話を伺う機会に恵まれた。

  「近衛さま、陽明文庫を拝見しとうございます」と私は失礼をもかえりみず、くつろぎのあいまに申し上げてみた。私は平成20年、国立博物館で「陽明文庫70周年記念特別展」を見学、近衛家一千年の名宝を心に刻み、必ずや京都の陽明文庫を拝観したいと念じてきた。

  まさか、その直系の方に、藤原道長をはじめ日本の古典文学の源流をお尋ねすることができるなんて、夢のようだった。「御堂関白記」は日本政府が推薦、ユネスコは「世界最古の自筆日記であり、重要な歴史的人物の個人的記録」と指摘。まさに真正、唯一、世界的に重要かつ貴重な宝物である。

  さて近衛家では藤原鎌足より数えて1300年の歴史を経て、近衛家と称してからすでに31代の今日に至っているという。歴代の古文書、古記録、古典籍その他、奈良平安時代からのもの20万点が陽明文庫に収められている。

  5年前、国立博物館で拝観した「御堂関白記」。ガラスケースの中に「寛弘五年九月十一日」の項が開かれて片側に重しが載せられてあった。これが道長公の真筆、ご筆跡!「十一日午時平安男子産給」と見える。私はすぐ歌の形でつぶやいた。「寛弘五年九月十一日午(うま)の時平らかにみこうまれたまふと」と、自作というにはあまりに恐れ多いけれど、年号等の覚えの悪い私にしては恰好の記録詠となった。

  中宮彰子ご出産後、敦成親王五十日の祝いの11月1日が「古典の日」と定まったのは昨年のこと。古典が好きで、奇しくも今年は毛越寺の古式の行事にはべらせていただいて、あの日の緋袴(ひばかま)、袿(うちぎ)衣裳の感触を思い出している。
(八幡平市、歌人)


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