盛岡タイムス Web News 2013年  7月  9日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉178 及川彩子 6月の花嫁


     
   
     

  ここイタリアも、6月は「ジューンブライド=6月の花嫁」の季節。6月に結婚すると幸せになれると言われているのです。

  梅雨もなく、1年で最も爽やかなこの時期。週末になると、あちらこちらの教会から、いつもにも増して荘厳な結婚式の鐘の音が鳴り響くのです。

  私の住むアジアゴの教会のオルガニストを依頼されている関係から、この6月も日曜ごとに結婚式で大忙しでした。結婚行進曲に始まり、ミサの選曲、神父と打ち合わせ、新郎新婦を招き、合唱団を交えてのリハーサルなど、各組ごとに意向も趣も違います。

  連日のように教会に足を運ばなければなりませんが、オルガニストも合唱団も宗教奉仕。普段は味わえない充実感もあるのです。

  今年は特に、アジアゴ近郊の人口百人足らずの典型的なチロルの村ストカレードで担当した結婚式が印象的でした。

  ヒロインの新婦のガルダは、役場の受付嬢。新郎は、ローマの憲兵アンドレア。その新郎を一目見ようと、小さな教会は、朝早くから人があふれ、ラッパも鳴り響き、村挙げての祝福ムードでした。ローマからやってきた新郎親戚一族も、驚きを隠せない様子。軍服姿のりりしい新郎仲間たちに見守られ、厳粛な結婚式が始まりました[写真]。

  軍隊に準ずるイタリアの憲兵は、イスラムのテロ対策、密入国者取り締まりなど、のどかな村には想像もつかない危険と常に隣り合わせです。けれども「この国を守るのは、軍隊ではなく、新しい家族です」と力強く語ったアンドレア。

  誓いの言葉のために、彼らが選んだオルガン曲は、イタリア音楽の父ヴェルディのオペラから「飛べ、金色の翼に乗って」。逆境に立ち向かう民衆の大合唱曲で、第2のイタリア国歌とも言われます。

  終了後、「子どもが授かったら、洗礼式でも弾いてくださいね」と、両手を差し出してくれた二人の幸せを祈らずにはいられません。


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