盛岡タイムス Web News 2013年  9月  10日 (火)

       

■  のしかかる自己負担 県央豪雨災害から1カ月(下) 盛岡市・雫石町 既存制度超えた支援を 個人住宅や商店など


 8月9日の集中豪雨の被害自体も記録的なものとなった。雫石町と矢巾町を結ぶ県道矢巾西安庭線は9日午前10時から通行止めが解除されるなど、土木施設で応急復旧の動きが見える。一方、個人の住宅や事業に関しては復旧へ自己負担が重くのしかかる。被災地域の住民の多くが高齢化し、営業再開や落ち込んだ売り上げ回復へ、わずかな資金の捻出にも苦慮。既存の制度以外の救済も叫ばれる。

     
   床上まで浸水した店舗内で泥をかぶった工具類などがそのままになっている雫石町上野の谷藤商店(9日正午ごろ)  
   床上まで浸水した店舗内で泥をかぶった工具類などがそのままになっている雫石町上野の谷藤商店(9日正午ごろ)
 


  ■売上の回復に1年

  雫石町でも御明神地区は特に広範囲が被災した。道路・のり面の崩れ、農地の冠水や土砂流入、建物の浸水など多岐にわたる。

  JR田沢湖線の春木場駅入り口にある同町上野上野沢の谷藤商店では、店舗内に約40aの浸水被害があった。酒類は瓶やプラスチック製の容器のため拭き取ることができた。農作業に使う金属製の工具類が泥をかぶって汚れ、廃棄せざるを得なくなった。

  店主の谷藤徳泰さん(72)は自ら酒類の配達などを切り盛り。3月に末期がんで亡くなった妻の病気が判明した年明け、一度は廃業も考えたが、娘が日中手伝いにくると申し出て継続を決めた。矢先の豪雨被害だった。

  「先週ようやく店内が乾燥し、臭いもしなくなった。被害額がどのくらいか勘定する余裕もない。町内では何かしらの被害があり、お盆なども注文を受けた樽酒のキャンセルがあった。集まりがあっても酒を飲む雰囲気になく自粛ムード。以前の売り上げに戻るのに1年はかかる」


  ■新たな支援制度を

     
   宅地内に大量の土砂がたまったままとなっている盛岡市猪去の浅沼さん宅(9日午後2時すぎ)  
   宅地内に大量の土砂がたまったままとなっている盛岡市猪去の浅沼さん宅(9日午後2時すぎ)
 

  盛岡市の盛岡つなぎ温泉では加盟するホテル・旅館12施設のうち11施設が営業を再開済み。15日には約1カ月半ぶりに日曜朝市が再開される。同温泉観光協会では秋の行楽シーズンへ足湯の早期復旧も目指し、売り上げ回復を目指す。

  朝市は、会場の手つなぎ広場が土砂などの仮置き場となっているため、観光案内所前で午前6時から同8時半まで開く。出店は同市太田や雫石町の農家ら10〜12団体が出店予定。再開は貴重な収入源として出店農家らが強く要望した。

  高橋金兵衛つなぎ地区振興福祉推進協議会長は「広場は当温泉の玄関口であり、早めに撤収してもらい景観上の配慮を強く要望している。メーンストリートも改修を早期にお願いしたいが、査定前で現状のままとなっている」と話す。

  同時に温泉街の飲食店や美容室などで再開が見合わされている。高橋会長は「夜の街に明かりがなく観光客が寂しい思いをしている。再開へ厨房器具などの調達が必要だが、高齢のため融資を受けるには保証人や担保など条件が厳しい。意欲を持っているところへ支援する仕組みが必要だ」と説く。

  ■重い「自己負担」

  河川や水路があふれ、宅地内に大量の土砂が流入する事態も各地で起きた。重機や人手がなければ、個人の力では到底撤去できない。行政側は基本的に自己負担とし、倒壊した家屋なども一定の条件を満たさなければ水害保険など民間の補償制度活用を求めるにとどまっている。

  盛岡市は2次被害の危険性が判断される場合に限り、市が撤去すると説明。対象にならない世帯も多くあり、土砂の仮置き場への運び出しも含め、市の説明会で不満を述べる被災住民もいた。

  同市猪去字畑中の浅沼照美さん(62)宅では北接する猪去大沢があふれ、遮蔽(しゃへい)型のフェンスを壊して土砂が流入。住宅が完全に囲まれた。水が引いたあとも50a以上の土砂が庭にたまり、埋もれてしまった植栽などがある。水の通り道を設けて土砂を寄せると、2b近く積み上げることになった。

  被害の大きさから市による撤去が決まっている。浅沼さんは「いつになるか分からないが待っている。生活に支障の出ないよう自分で作業したり、地域やボランティアに協力してもらった。大雨でまた土砂が流れるのを避けてほしい。こちらも自己負担になるがコンクリートブロックを積む」と話していた。


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