盛岡タイムス Web News 2013年  9月  20日 (金)

       

■  〈学友たちの手紙〉146 八重嶋勲 タンク樽の様な別嬪か御入來


■193巻紙 明治三十七年二月二十三日付

宛 東京市本郷区台町一九 三洲舘内 野村長一様
発 三月八日 盛岡市肴町 阿部秀三

謹呈

六日付の御状正ニ拝受仕候、

荊妻相迎候ニ就いて御懇篤なる祝詞を賜り辱なく存候、旧臘無理往生に妻帯を強いられ如何とも致し難く運を天に任かせてうんと答ひ申候結果、紀元節にタンク樽の様な別嬪か御入來ニ相成申候、まるで一葉の小説にあった何んたかの様な仕掛けで花聟花嫁に相成候、御想像被下度候也、

先達而甚た御迷惑なる御願事申上、誠ニ相済さる次第ニ御座候、実ハ友人の熱心に今回之事業に着手致し、小生抔を力にしてやれ何やれ何と依頼し來り、出來る限り学校の学博連へ頼み考案呉れ候得共、意匠上に就いては皆わからず屋に候故、不遜をも不省尊兄まて累を及ほじ候次第、御推察被下、不悪御ゆるしの程願上候、速達御親切に御勉強中なる御友人御訪問被下、御頼み被成下候由、重ね々御申譯無之候、意匠色の配合文字等全般貴意に従ひて御願被下度候、実ハやいやいと毎日の様に手紙を送り越し、小生も閉口頓首致候間、あまり御面倒なく御願被下度候、小生もありふれたる俗臭きペーパー抔は見っともないから少し時日を俟つて居れしたら立派なものか工夫せられて参ると慰め居り申候、

重ね々御迷惑に御座候得共、事情御洞察可然様御願申上候、

箕人君は如何なされ候哉、小生よりも一こう手紙差上けず居り候て、皆様へ失礼勝に御座候、全くこれも破れ袴の弊ならんと自ら耻入事に御座候、

別段痩子君へ手紙差上不申、尊兄よりよろしく御礼被下度、何れ露国か敗けて哈尓賓ても開放せられ候節ハ、花聟花嫁移住せんかな抔とし考へ居候間、左様相成候ときハ貴兄方の寓居御尋ね二人して御礼申上候、後便残々猶可申、乱筆御免被下度願上候、

                 草々
   三月八日
                阿部秀三
  野村長一様
      坐下

 【解説】去る2月22日付、阿部秀三から依頼のあった、友人の起した事業、西洋の乾し野菜の缶詰のレッテルのデザインについて、長一は早速、その道の友人にお願いして進めているようである。それに対しての礼状である。なお、阿部秀三が結婚したことに対し、長一がお祝い状を差し上げているようである。「紀元節にタンク樽の様な別嬪が御入来に相成申候、まるで一葉の小説にあった何んだかの様な仕掛けで花聟花嫁に相成候、御想像被下度候也」とおどけて言っているところが面白い。


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