盛岡タイムス Web News 2013年  10月  5日 (土)

       

■ リンゴの1世代を大幅短縮 岩手大の吉川教授らのグループ ウイルス活用、世界初

     
   ALSVを活用して育成中の植物を見守る吉川教授と、研究の中心となった山岸紀子研究員(右から)  
   ALSVを活用して育成中の植物を見守る吉川教授と、研究の中心となった山岸紀子研究員(右から)
 

 岩手大学農学部農学生命課程の吉川信幸教授(57)らのグループは、リンゴ由来の無害植物ウイルス(ALSV)を活用し、リンゴの1世代(当代種子から次世代種子まで)を1年以内に短縮する技術を世界で初めて開発した。吉川教授は「世界で初めて成功した研究。日本、岩手の技術として広まれば」と語る。今後は品種改良の期間短縮や研究分野での活用が期待される。

  ALSVは、遺伝子内にある植物が元来持たない機能を発現させる遺伝子を組み込み感染させるとその植物に機能を発現させ、半面、ある植物が元来持つ機能を組み込み感染させるとその機能を抑制する働きを持っている。

  研究グループではALSVにリンゴが持たない開花を早める(開花促進)遺伝子と、リンゴが持つ開花を遅らせる(開花抑制)遺伝子の2種類を組み込み、リンゴの種子に投与。すると、感染したリンゴの種子は開花抑制遺伝子が作用し、開花抑制遺伝子の働きが抑えられる。

  結果、感染リンゴの90%が種をまいてから1・5〜3カ月で開花を始め、その後、6カ月にわたり開花を繰り返した。開花した花同士を受粉させたところ、果実と種子が採れた。採取された種子は正常に発芽。さらに、前の世代に感染させたALSVも発見されなかった。

  従来のリンゴの品種改良は、異なる特性を持つ品種を掛け合わせて種子を取り、その種子をさらに育成して種子を取るという工程を数回繰り返して行ってきた。果樹類、特にリンゴは種から成長させた場合、幹の成長を優先させるため、開花するまでに10年ほどを要する。

  開花しないことには果実、ひいては種子を収穫できないため、品種改良には長い期間を要していた。アメリカでは一つの品種を作るために7回交配を繰り返し、50年を要した例もあるという。吉川教授らのグループが今回開発した技術を用いることで、リンゴ1世代の期間が短縮でき、品種改良そのものの期間短縮にもつながるという。

  吉川教授は「リンゴそのものの遺伝子を組み換える研究は各地で行われてきた。私たちの研究は、次の世代にウイルスが残らないのが強み。遠くない将来、実用化できると思う」と自信を見せる。「温暖化やTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の問題もあり、日本もいい品種を作ろうとしている。そこで役立てたら」と話していた。

  研究結果は学術専門誌のPlant Biotechnology Journalのウェブ版に掲載されており、紙面にも今後掲載される予定。



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