盛岡タイムス Web News 2013年  10月  10日 (木)

       

■  〈夜空に夢見る星めぐり〉339 八木淳一郎 温故知新


 盛岡天文同好会は昭和40年の創設ですから、半世紀近い歴史を刻んだことになります。現在は県内にいくつもの同好会組織がありますが、当時は岩手県内唯一の天文愛好家の団体でした。全国的には、すでに仙台天文同好会をはじめ主だった都市には大概、同好会があって、観測会や普及活動を行っていることを知り、憧れたものでした。

  盛岡天文同好会も発足後、市内高松の教育センターへの天文施設の設置や小岩井まきばの天文館の実現に微力ながら貢献できたと自負しています。15年ほど前からは盛岡市民のための天文台実現を盛岡市に働き掛け、市議会で二度にわたって請願が採択されました。幾多の苦難や障壁がありましたが、市長さんや教育委員会のご厚意とご理解を得て実現が目前に迫っています。

  ところで、趣味としての天文雑誌というものが戦後間もない頃から出版され、多い時には4種類もの雑誌が書店の店頭に並んだこともあります。出版社は、当時玩具のような粗悪な国産の小型望遠鏡のテストリポートを行い、容赦なく厳しい評価を下していきました。反発する一方でメーカーは反省と努力を重ねて品質を向上させ、日本は世界に冠たる小型望遠鏡王国となりました。同時に天文雑誌や望遠鏡メーカーは天文産業と呼ばれる分野を作り上げ、天文趣味はこうあらねばならぬ、といった過剰なまでの誘導に、オタクやマニアや族が急増したのも事実です。

  さて、岩手は、かの宮澤賢治を生み、花巻市には小型望遠鏡やレンズ工場があり、緯度観測所を水沢に選定した田中館愛橘博士を輩出し、その旧水沢緯度観測所が世界をリードし、今またILCの誘致に一歩踏み出すなど、天文の世界に決して無縁ではない土地です。しかし、これまで各方面の天文への関心や理解が遅れをとっていたことは否めません。

  10年前の日本天文教育普及研究会の調査では、全国の高校の天体観測設備の設置率は5%です。岩手のおよそ100校の高校のうち、5校にはあっていい勘定になりますが、今なお盛岡一高一つという状況です。

  京都大学宇宙物理学教室の故山本一清先生が1920年に創設した、天文学者とアマチュア天文家の交流や研究発表の場である東亜天文学会という全国的な組織があります。会誌「天界」ともども、天文愛好家で知らない人はいないと言っても過言ではありません。古い天界誌をひもとくと、各時代の天文事情を伺い知ることができます。

  戦後間もない昭和25年の毎月号に目を通してみますと、旭川市天文台や高知天文館の開設、横浜市の天文台に口径50aの反射望遠鏡が設置され一般公開が始まったこと、東京、島根、愛媛、大阪、和歌山、京都、兵庫等々、実にたくさんの地域の中学・高校に望遠鏡が次々に備えられたことが報告されています。

  仙台市天文台ができたのも昭和29年のもののない時代でした。貧しさに屈せず、復興と人材育成や理科教育に懸ける情熱が伝わってきます。
(盛岡天文同好会会員)


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