盛岡タイムス Web News 2013年  10月  10日 (木)

       

■ 〈風の筆〉21 沢村澄子 「翻訳サイト」


 夕べから頭が痛かった。けさも痛いまま散歩に出た。きょう中にこの原稿を上げなければならないと、帰るやいなやパソコンに向かったのだが、どういうわけか進まない。すぐに行き詰まってタイトルを変え、それを3回繰り返して挫折。また気晴らしに買い物に出た。

  カリフラワーが並んでいた。栗や芋やカボチャ、ナシ、ブドウ、キノコ。まさに秋爛漫(らんまん)である。ホウレンソウも地物が出回り始めている。やはり冬が近づいているのだ。

  袋を提げて戻る頃には、頭痛が耐えかねるほどになり、先日抜歯の折にもらった鎮痛剤を飲んで寝た。

  起きたら、今、昼だ。痛みが治まった、ぼんやりした頭に、作文が進まなかった理由が分かってきた。

  ここしばらく慌ただしかったので、「風の筆」の原稿は先週分まで、まとめて先にお渡ししていたのである。だから、この作文をするのは1カ月ぶりくらいになる。  

  その間、わたしらしくないことに奔走していたのだが、その最たるものが「英訳」。苦手な学業の中でも語学はその筆頭だったので、連日苦汁、苦汁。ひたすらインターネットの「翻訳サイト」のお世話になった。

  日本語を入力すると機械が自動的に英訳してくれる。その逆もキー一つをたたけばよく、アッ!という間である。ところが、それはあんまりだという訳も続々登場してくるので文句を言っていたら、それは「アナタの日本語が悪いのだ」と英語に達者な友達に叱られた。英訳しやすい和文があるのだという。主語述語を明確に。できるだけ短文に。余計なことは書かないこと。

  しかし、わたしからムチャとムダを取ったら何が残る。それに、よくよく考えてみると、本当に言いたいことほど、それこそ、なかなか言葉には表すことができないものではないか。

  そうパソコンに向かってつぶやいてみても返事はないので、ひたすら簡便な日本語を書くことに努めた。それがしばらく続いていたために今もその調子が抜け切れず、何だかリズムがとれずにこの作文が難しかったのである。今もまだ自分がギクシャクしていて言葉が湧いてくるという感じがしない。自分の呼吸、「息」とは文字通り「自らの心」であるから、そこが自分を離れてどこかに行くと、調子が狂ってしまうのだろう。

  「彼岸か此岸か分からない景色だと思った」という日本語はついに機械では訳せなかった。それで、I seemed to be in a dream world, not the real world. と訳した。それでも、途中から頭が何となくハンバーガーのようになってくると(頭が英語で考え出すと)、日ごろ日本語では考えたこともなかったような文章も飛び出してきたりして、Always, I'm trying to make such a relationship so that people can find big hope there. が予定外に付いた最後の一文。

  しかし、わたしは謙遜ではなく本当に英語がダメなので、翻訳サイトや誰かの助けがないと、自分の職業欄でさえ時々、「カリグラファー」だか「カリフラワー」だか、分からなくなる。
(盛岡市、書家)


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