盛岡タイムス Web News 2014年  4月   3日 (木)

       

■  〈風の筆〉44 沢村澄子 「鹿児島へ」


     
  桜島と錦江湾  
 
桜島と錦江湾
 

 は〜ァ〜るばる来たゼ、かごしま〜、と歌いながらタラップを降りてみた。羽田空港から2時間ほどの短いフライトで鹿児島空港に着く。

  暖かいかと思っていたらそうでもない。盛岡から着てきたダウンもそのまま。桜島は雪をかぶっていた。

  人生何が起こるかわからない。ひと月前には思いもよらなかった九州・鹿児島へ突然の用で来て、空港の足湯にもう漬かっている。

  人々は人懐こくオープン。すぐ話し掛けてくる。ところが、その言葉をわたしがなかなか聞き取れなくて「え?え?」と聞き返してばかりで申し訳ない。それでも彼らは屈託なく笑い、話し続け、その意味の半分も分からないまま、わたしもまた、話しては笑った。

  3月11日は霧島神社に詣でた。その日は午前10時から東日本大震災のための神事があって、大きな募金箱も置かれてあった。会う人会う人、岩手から来たと聞けば、「地震はどうだった? 今どうなってる?」と心配してくださる。霧島神社は坂本竜馬が新婚旅行で訪ねたとされ有名な所。

  かつて、中学の修学旅行で大阪から九州に来たことはあった。しかし、その時は北の半分で、鹿児島は初めてである。福岡や長崎や別府がどういうものだったか記憶にないのだが、今回の鹿児島はとにかく「南国」という印象。おおらかで熱い活気に満ち満ちていた。

  霧島神社から車で鹿児島港まで走る山道で桜を見た。菜の花が至る所で黄色く揺れていた。家々は昔ながらの平屋建てが多く、瓦を載せており、門の辺りにはよくキンカンの木が植えられてある。墓のおのおのにも屋根が付いているのはやはり、火山灰が降るここならではの光景だろう。

  どこに行っても、あまり観光地化されていないのがいいと思った。人々の素朴な暮らしがそのままに繰り返されている。百年前も千年前もこうだったのではないかと思われるような景色が、至る所で普通に目に付くのだった。

  さすがに魚がおいしい。イワシのすしも絶品。イカも甘い。さつま揚げの揚げたては、んー。何とも描写に難しく、大量魚のムチムチ圧縮餅ボン!という感じ。

  宴会の買い出しに出たら、魚屋で「親のたたき」というのを売っていた。地鶏の成鳥を軽くあぶったもので、皮がうっすらと焦げ、身は生である。コリコリとした食感と、その味。鳥ってこういう味だったのか〜と深く感心しながら、ひたすら、わさびじょうゆでいただく。

  隣の酒屋さんが閉まっていると、魚屋さんが自分の焼酎の一升瓶を持ち出してきてお代を取ってくれず、それがまた希少なものと分かって大いに困ったが、おいしい肴につられて、ついつい、キレイさっぱり飲んでしまった。
     (盛岡市、書家)


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