盛岡タイムス Web News 2014年  4月  22日 (火)

       

■  〈詩人のポスト〉 「いなくならない」金野清人


  
あなたがいなくなったと知った朝
三月の雪もよいの空の下
庭の福寿草が
名残の雪で埋もれていた
訃報を告げた新聞を広げたまま
妻の驚きの声が聞こえ
悲しみの一日が始まった

あなたが旅立ったとは思っていません
吉野重雄さん
悼むこともしたくない
教員時代からのつきあいを
いまさら断つなんて無理な話
からだはいなくなったって
いなくならないあなたがいる

来し方の思い出をたどると
拙著の出版記念祝賀会で
進んで代表になってくれたっけ
「堅香子」主宰の労を取ってくれたった
なによりもたくさんのお便りで
心の内を打ち明けてくれたよね

いつか
あなたはきっぱりと
「私がいなくなっても作品は生き残る」と
語ってくれたっけ

あなたは今も私に触れてくる
八十路の「私の峠」を越えて
終の住み処の「隠れ里」に引き籠もり
風に和む手で
雨に癒される眼差しで
銀河に慈しまれる微笑みで
いなくならない大兄が
老生の琴線に
そっと触れてくる



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