盛岡タイムス Web News 2015年  1月 12日 (月)

       

■  〈幸遊記〉209 照井顕 青木明のスポーツオーディオ


 忘れられない音というものがある。昭和40年代、とある一流オーディオメーカーの仙台支店に勤めていた方(名前失念)の住居に招かれ、聴かせてもらったレコードの音。あの時の音が瞬時にしてよみがえった音に出合って驚いたのは昨2014年10月、東京は板橋のスポーツ店でだった。

  「穐吉敏子・1980・IN・陸前高田」のCDを、都内全ジャズ喫茶を巡りながら、販売も頼んでいた成田隆さんが「照井さんにぜひ会わせたいオーディオ好きの人がいる」と言って上京の折に、成田さん夫妻が僕を連れていった先がそこだった。店の奥脇から通された所はオーディオルーム、一部屋ぎっしりオーディオだらけ。EMT、ガラード、マッキントッシュ、マークレビンソンなどなど、一流ブランドのヴィンテージものの名機と、数多くのカートリッジ群。使われていたスピーカーは何と40数年前に聴いて、いまだ忘れずにいた音の、ゴトウ・ユニット。それにアルテックウーハーをプラスしたもので演奏家たちがそこに実在するかのごとき響きを伝えてくれる、実に心地のいい音なのだった。ホーンの鳴きをアスファルトで消した4ウェイマルチシステム。アナログレコード、プレイヤーやカードリッジを次々取り替えては、さまざまなジャズを聴かせてくれる、極上のひとときを過ごしながら、心に残っている音というものの確かさを改めて実感させられた。話を聞けばもう40年以上も使っているという。

  店の名は有限会社アオキスポーツ。店主は青木明さん(70)。皇室御用達の馬具店として明治期に創業した「青木馬具店」が前身。満州から引き揚げて来た父が「これからは馬具だけではダメ」と銀座でスポーツ店を営んでいた叔父のアドバイスで始めたスポーツ店。明さん30歳の時、その父に「これからはお前がやれ」言われて以来「自我を出さず、お客さまの言葉に耳を傾け、客観的立場で接してきたことから今日がある」のだとも。父の仕事の仕方(球友会、山岳連盟、ハイキングクラブ、テニス協会などを立ち上げて事業を軌道に乗せた)を尊敬しつつ、母のやっていたたばこ屋も引き継いで、たばことスポーツを融合させたユニークな店として知られている様子。ご自身は休日の自転車、毎日犬との散歩が体のスポーツ。その愛犬と一緒に聴くオーディオと音楽は彼の心のスポーツなのでした。
  (カフェジャズ開運橋のジョニー店主)


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