盛岡タイムス Web News 2015年  1月 14日 (水)

       

■  〈日々つれづれ〉256 三浦勲夫 逆ピラミッド


 日本の人口構成は若者が少なく、高齢者が多い逆ピラミッド型。現在、60歳以上が全体の25%を占める。10年後には30%を超すという。人口は1億2千万。これも年々減少する。当然、労働人口、国庫収入、経済成長などに大きな影響が出る。そこで政府は、@高齢者の定年延長A女性の積極活用B身障者の就労拡張C結婚と子育ての支援D外国人労働力の導入―などを推進している。

  高齢者の問題を考えたい。元気な老人は「老いてますます盛ん」とピラミッド時代の昔は言われた。皮肉なことに、逆ピラミッドの今は「老いてますます盛ん」とあまり聞かない。代わって聞くのは「元気な百歳」だろうか。「老い」の垣根が高くなり、「盛んに(健康に)老いる」ことは容易ではない。しかし「盛んに老いる」ことが逆ピラミッド型社会では、ことに大事になる。病気を治療しつつも、元気で活動する。

  容易ではないが高齢者も、仕事、奉仕、家庭・社会活動をこなすことになる。昨年、大学同級や高校同期の集いに出た。正月には老若の人たちからの年賀状を読んだ。仕事はじめの日には退職した大学の新旧教職員の新年会に出た。人生の先輩、同輩、後輩の人たちの現状を直接、間接に確かめることになった。昔、個人的に想像した高齢者は働き終えて悠々自適でうらやましいと思った。実際にその年になると、山を下るのと同様に厳しい。傾斜に合わせ無理せずに、できるだけ自力で歩んでいきたい。

  それでは、女性、若者、身障者、外国人などをめぐる社会状況はどうなるだろうか。女性の生命力は強い。元気でトラックを運転して、注文品を届ける女性が「こんちわあ」とやってくる。「大和なでしこ」のかつての意味を、4年前、女子サッカーのワールドカップで優勝した「なでしこジャパン」のイメージががらりと変えた。目を見張る現象が続くが、女性がさらに多く、社会の各層で働くとき、男性の女性観も変化を求められる。会話、文学作品、学習会などで、女性観を、さらには女性から見る男性観も深めたい。

  障碍(がい)を持つ人の状況はどうか。理解と受け入れは進んでいるとも、まだ問題が深いともいえる。パラリンピックで活躍する選手たちは、高い運動能力で感動を与える。障碍を克服する力が豊かに秘められている。今年の箱根駅伝では片方の目の視覚障害の選手、全国大学ラグビー選手権では聴覚障害を持つラグビー選手が報道された。障碍者の社会的統合は、就労機会の拡大にとどまらず、生きがいにつながる。

  外国人、特にアジア系外国人がますます日本に流入する。その人たちが特に進出する先は、IT産業、家事ヘルパー、介護施設などと予想される。歓迎される一方、一種の違和感を持って対応される局面もありうる。パリで発生した二つの銃撃殺人事件や欧州の異民族、異教徒排撃運動がある。日本はその問題にどう対処するのか。このようなテロ事件はいつ、どこで起きても不思議ではないとも言われる。日本は敗戦後、外国人に依存すること少なく、復興を成し遂げた。これからはどうなるか。若者も堅実な労働力となる勉強と技能訓練を怠れない。将来の若い労働力減は、逆ピラミッドを数的に補正するだけの問題ではなく、老若男女、異文化の人たち、をどのように有効に社会統合するかの問題ともなる。
(岩手大学名誉教授)


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