盛岡タイムス Web News 2015年  1月 17日 (土)

       

■ 〈体感思観〉 あかつきの願、脈々と 山下浩平


 
 この時期、各地で盛んに行われている行事といえば、裸参りがその一つに挙がるだろう。主に夕方から夜にかけて寒さが厳しい中、1年の無病息災や五穀豊穣(ほうじょう)を願いながら、ゆっくり、ゆっくりと歩を進める姿は、はたから見ても身が凍え、引き締まるものがある。

  5日早朝、紫波町上平沢で行われた五元日祭の裸参りを今年初めて取材した。江戸時代、現在の志和地区で村井権兵衛により酒造りが行われるようになった頃に始まった行事といい、戦乱などで途絶えた後、志和八幡宮の氏子青年会の手で復活。今年で40周年を迎えた。

  盛岡市内の裸参りのほとんどが夕方から夜にかけて行うのに対し、午前5時すぎの早朝から実施するのは珍しい。日の出間際、まさに最低気温が観測される時間帯の寒さは、想像を絶するものがあるだろう。

  同青年会によると、発祥した当初は酒蔵の杜氏たちによって行われていたという。県外の裸参りでも、杜氏の参拝を発祥とする地域がいくつかあり、酒の仕込みが本格化する冬に、醸造の安全や成功を願って行われていたようだ。

  酒蔵は古くから冬場の働き口として、住民の生活を支えていた重要な存在。裸参りには今でこそ、県外からイベント感覚で参加する人もいる。だが、発祥当時、酒造りに携わっていた人たちにすれば、家族を支えるための仕事を前にした、重要な儀式であったに違いない。

  同町は四つの酒蔵があり、酒造りは代々活発に行われてきた地域。特に志和地区といえば吾妻嶺酒造店、「堀の井」の橋酒造店がある。

  一度は途絶えたものの、復活を遂げて節目を迎えた同地区の裸参りに、脈々と受け継がれてきた南部杜氏の意気を感じた。


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