盛岡タイムス Web News 2015年   1月   31日 (土)

       

■ 〈体感思観〉馬場惠 郷土思えばこそ進学を


 「都会に出してしまっては、もう2度と戻って来ない」と息子の大学進学を渋る親を、高校の校長らが熱心に説得して受験を認めさせた、という話を聞いた。まれにみる優秀な生徒だったという。

  校長が頭を下げた、という話の真偽は定かでないが、経済的な事情や情報不足から進学を諦め、自身の可能性を狭めてしまっている高校生が岩手には、まだ多い気がする。

  事実、本県の大学進学率は他の都道府県と比べても低い。進学だけが、その人の将来を開く全てではないが、才能ある若者が、広い世界を知らないまま地域的な事情で、挑戦の機会を逸しているとすれば、何とも惜しい。

  自分自身が沿岸部の高校生だった二十数年前。高校は一人でも多く大学へ合格させようと熱心だったが、周りの大人たちには「さほど力もない女の子に無理させる必要はない」という空気が漂っていた。

  インターネットも普及し、あの頃に比べれば、さすがに情報格差はなくなっただろう。それでも、人口が少ない地方に行けば行くほど、日常的な人間関係は限られ、ともすれば、狭い大人の価値観で物事を判断しがちだ。若者も、広い世界に目を向ける前に、楽な道を選んでしまう。

  少子高齢化、人口流出が大きな社会問題だ。魅力的な雇用の場が地域にないことが、人口流出の大きな原因と言われている。だからといって、地元に若者を残す内向きな施策だけでは不十分だ。新たな視点で古里の良さや可能性を見いだし、発展させる人材を育てるためには、いったん地元を離れて知識やスキルを磨き、経験や人脈も広げた上で古里に貢献できる仕組みが必要だと思う。

  人材不足は医療分野に限らない。県外に進学し就職しても10年後、20年後に古里に戻って貢献した場合には、返済を一部免除するような長い目で人を育てる奨学金制度はどうだろうか。



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