盛岡タイムス Web News 2015年  9月 19日 (土)

       

■  〈体感思観〉 編集局 相原礼以奈 郷土芸能に息づく祈り

 

  夢中になってカメラのシャッターを切り続け、気付いたら数百枚もの写真を撮っている。郷土芸能の取材に行くと、そうしたことが多々ある。動く人を撮っているため写りの悪い写真が多くなることもあるが、やはり華麗かつ雄壮な踊りに気持ちが盛り上がることが一番の要因。いい瞬間を撮って魅力を伝えたいという思いも強くなる。

  8月30日には盛岡市の肴町商店街で開かれた盛岡市青少年郷土芸能フェスティバルを取材した。さんさ踊り、獅子踊り、神楽の計7団体が出演。小中学生を中心とした踊り手たちが一生懸命に舞いを披露し、アーケードを埋める大観衆の喝采を浴びた。

  フェスティバルを主催した盛岡市無形民俗文化財保存連絡協議会の藤沢清美会長は「民俗芸能の本来の目的として、祈りと娯楽というものを考えている」と話す。現在は娯楽が主となっているものの、祈りも大切な要素という。獅子踊りは鹿の供養に起源を持ち、五穀豊穣(ほうじょう)や家内安全。さんさ踊りは先祖供養、神楽は家内安全や長寿の祈願と教わった。

  9月上旬には同市の南昌荘で、北上市の元美術教師・谷内博司さんがユネスコ無形文化遺産にも登録される早池峰神楽をテーマとした版画展を開催。展示された24作品から、作者の感じる神楽の迫力や神秘性が伝わってきた。谷内さんは「本当の神楽の魂は病気や凶作からの救いを求めたもの。だから素晴らしい演技をする。本来の『神にささげる』という思いを失わないように表現したい」と語った。

  現代の生活には大量の餓死者が出る食糧難はなく、科学も進歩しているため祈りの習慣は薄れている。しかし何百年も前の人々の切実に願う心が芸能として受け継がれ、今日の人の心を動かしていると思うと興味深い。郷土芸能鑑賞の機会も増える秋に、本来の意味を大切にしながらその魅力を味わいたいと思う。


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