盛岡タイムス Web News 2015年  9月 21日 (月)

       

■  〈幸遊記〉245 照井顕 大野加奈の銅版画「木曜日の花束」


 ただいま(2015年9月)僕の店「開運橋のジョニー」で開いている銅版画展「木曜日の花束」の作者・大野加奈さん(62)のことを知ったのは1990年代半ば。加奈さんの大親友だった故・黄川田芙美子さんからの紹介だった。当時僕の店があった陸前高田市大町商店街が運営していた「まちかどギャラリー」の隣が「ジョニー」だったこともあり、98年10月、ギャラリー開設5周年企画として僕が看板を書き展示させてもらったのが、大野加奈さん(さいたま市在住)の銅版画展「うさぎの招待状」だった。

  芙美子さんは犬猫を飼い、ウサギも好きだったようで、僕の店に置いていたマイカップにはピーター・ラビットの絵が描かれていた。彼女は加奈さんと同じ1953年生まれでしたが、2011年3月11日の東日本大震災で57年の生涯を閉じてしまったのです。あの年は卯年。「うさぎの招待状」ならぬ芙美子さん用の「蔵書票」を加奈さんが制作して出来上がった途端の出来事だったと、間もなく加奈さんからその芙美子さん用の一票が僕の手元に送り届けられたのでした。

  1980〜90年代の頃、僕らが主催する大きなジャズイベントの時には必ずスタッフになり、前売券をさばき広告までも出してくれたし、頭が良く心顔の美しい人。津波直後、陸前高田駅周辺唯一の目印は、彼女が経営していた「黄川田薬局」のビルだった。「彼女とは東北薬科大学時代の1年生の時から下宿先が同じ、3年生から卒業まではアパートの同じ部屋で暮らしたのよ」と加奈さん。

  新潟生まれの彼女は今、老いた母の介護でふるさとの新潟と埼玉の二重生活。作品は何かを手本とするのではなく、本を読んだり空想したりと、頭の中に浮かび上がってくるものを作品にしているのだという。その作品一つ一つのタイトルみたいな「マリーの休日」「夜明けの夢」「旅物語」「アリスの庭」「朝のリズム」「午後の夢」「蔵書票」等々、それぞれの物語が書けそうなくらい不思議な魅力に満ちあふれている。そういえば、去る7月盛岡の「盛久ギャラリー」で行われた巡回展「私の蔵書票展」に、彼女の作品も展示されていたはず。なのに僕は健忘症にかかって見そびれてしまったのです。ごめんなさい。
(カフェジャズ開運橋のジョニー店主)


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