長い夏のバカンスも終わり、9月中旬から新学期が始まりました。猛暑から一転して秋風が心地よい、ここ北イタリアの高原は、キノコ狩りに沸き、街の店頭には、ブドウ、ナシ、リンゴ、クリなど秋の味覚が並び始めました。
「朝の果物は金、昼は銀、夜は銅」ということわざがヨーロッパにあります。ほとんど朝食を取らないイタリア人ですが、成長過程の子どもたちの朝の糖分補給は不可欠。食卓にチョコレートやビスケットなど甘い菓子類が並ぶものの、朝の慌ただしさの中、リンゴを片手に、かじりながら駆け出す子たちの姿も珍しくありません。
そんな時の頼りが「ダッテリ」と呼ばれるドライフルーツ。親指の大きさの、ナツメヤシで、こってりと甘く、エネルギーは、バナナ、アボカドを抜き、果物第1位。一年を通じ、ドライフルーツを好んで食べるイタリア人の台所には欠かせないものの一つです。
最近、日本でも「デーツ」と呼ばれ、知られるようになったダッテリは、北アフリカやアラブ諸国が名産。砂漠のオアシスなどによく見られるヤシ科で、紀元前4千年以上も前から栽培され、聖書には「生命の樹」として登場。当時から、遊牧民などの日常食でした。
食物繊維や鉄分が多く、今では免疫を高め、生活習慣病にも効用があることが証明されている、優れた食品なのです。
以前は日本でもなじみがなく、わが家でも、あまり手が伸びずにいたダッテリですが、エジプトやモロッコを訪れた際、果てしなく続くサハラ砂漠に見え隠れするヤシの畑や、露店に並ぶ黒々と光る、宝石のようなダッテリに感激し、思わずカメラを向けたのは、一度や二度ではありません[写真]。
砂漠の太陽を凝縮した実の味わいは、まるで黒砂糖。干し柿やようかんの食感が恋しくなると、つい口に放り込む一粒のダッテリ。なぜか、いつも故郷盛岡の秋祭りのにぎわいが思い出されます。
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