盛岡タイムス Web News 2015年  10月 14日 (水)

       

■  〈詩人のポスト〉 「ガラスの指輪」渡邊満子

 
 
「これえ 良(え)がべ 綺麗だべ」
節くれた母の手に
ガラスのルビーの指輪が光っていた

童女のようにはしゃぎ
私の目のまえに手をかざし
嬉しそうに指輪を見せる

戦時中七人の子供を育てた母
母の銘仙の袷の着物は
姉の標準服になり
絣の単衣(ひとえ)は私のモンペになった

少なかった着物は
どんどんたおされて
子供たちの洋服に変わっていった

 「おら なんにも要(い)らねぇ
   孫だぢさ 買ってやるんだ」
自分のものはなにひとつ
買おうとしなかった

秋の陽だまりで
母を想っている
あのガラスの指輪はどうなったのだろう

木漏れ日が光って



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