盛岡タイムス Web News 2015年  10月 27日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉238 及川彩子 チョコレート鉄道


     
   
     

 この夏に開幕したイタリアの一大イベント「ミラノ万博」も最終月を迎えました。食文化がテーマとあって、世界各国から業者・食通が集まった今回の万博も残りわずか。連日のにぎわいに拍車をかけています。

  そんな中、わが家の高校生の長女が、アジアゴ市主催の万博ツアーに学校仲間と参加。お目当てのイタリア館、日本館を目指して出掛けたのです。

  ところがうわさ通り、前評判の高かったイタリア館、日本館の前は想像を絶する長蛇の列。入館まで7時間待ちのアナウンスにやむなく諦めた後、おしゃれな木組みの館に誘われて入館したポーランド館の「チョコレート鉄道」に大感動[写真]。深夜帰宅するなり、興奮気味に話してくれたのです。

  ポーランドの豊かな針葉樹の森や丘を縫って走るチョコレート仕立ての鉄道…急がず、かつ甘い旅愁は、スローフードそのもの。

  チョコレートと言えば、有名メーカー「ゴディバ」に代表されるベルギーや、ココアを開発したオランダなどが思い浮かびますが、ここイタリアでは、ポーランドのチョコレート菓子も手頃な値段でスーパーに並び、イタリア市民にはより身近な味です。

  特に、老舗ヴェーデル社は、ナチスのワルシャワ市民占領政策の際、射殺の危険もいとわず、市民のために、秘密にパンを製造し続けたと語り継がれ、また、社員食堂や育児施設、優秀社員への金利ゼロ住宅ローン提供等、欧州に先駆けた福祉会社としても有名です。

  15世紀、新大陸発見からスペインへもたらされ、そのスペインから追放されたユダヤ人の料理人によって、欧州に広まったと言われるチョコレート。

  そして、ポーランドと言えば、ユダヤ人収容所・アウシュビッツの悲惨な歴史を抱える国ですが、「チョコレート鉄道」の醸す過去と未来の苦い甘さは、17歳の長女の胸に深く刻まれたようでした。


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