盛岡タイムス Web News 2015年  10月 28日 (水)

       

■  〈花林舎流庭造り―よもやま話〉44 野田坂伸也 岩手の庭で越冬できる原種シクラメン


     
  花色は、濃い赤から白まである  
 
花色は、濃い赤から白まである
 

 冬の花と言えばなんといってもシクラメンが圧倒的に人気があります。中央部にきれいに並んだ花は華麗そのもの、しかも花を見られる期間が長く、手入れもさほど難しくない、という優れた点の多い花です。ただし、私自身は思い出せないほど昔に1〜2度買ったことがあるだけですが。園芸種のシクラメンはあまりに豪華すぎて、食卓と本棚しかないわが家の部屋には似合わないように感じるからかもしれません。また、一冬に1〜2度は家の中で氷が張ることのある寒さに耐えられないのではないか、という心配もあります。たまに園芸店で近頃のシクラメンを見ることがあるのですが、ますます豪華になって近づきにくい印象を持つ品種が多い半面、花の大きさがさほどでもなく形もシンプルで、その代わり、さえたいい色の品種があってふと見入ることもあります。

  ところで、最近の園芸雑誌に時々「原種シクラメン」の紹介記事が載っているのを見かけます。原種シクラメン…つまり山野に自生しているシクラメンは、地中海沿岸地域を中心に約25種分布しているそうです。その中にはマイナス20度の寒さにも耐える種類がいくつかあり、ヨーロッパでは山野草的な使い方で庭に植えられてきました。土や気候が合えば栽培は容易で、園芸種と違って寿命も長く数十年生き続けるものもあります。

     
  まるで自生地のようにたくさんの株が開花しているシクラメン・ヘデリフォリューム  
  まるで自生地のようにたくさんの株が開花しているシクラメン・ヘデリフォリューム
 


  開花期は、秋、春、冬など、さまざまですが現在の日本では秋咲きのシクラメン・ヘデリフォリュームと早春に咲くシクラメン・コウムの2種類が人気があるようです。栽培もこの2種が最も容易です。とは言っても、夏にはほとんど雨が降らず、冬にまとまった雨が降る地中海気候の地方に自生しているシクラメンが、年間通して雨が多く冬には多量の積雪、しかも厳寒の地である岩手で育つということは誠に不思議です。5月下旬から葉が枯れてきて8月半ばまで地上部がなく、ヘデリフォリュームでは花は早いものは8月下旬には咲き出しますが、葉は10月になってようやく生えそろい、その後まもなく冬になって翌年3月までは雪の下で過ごすのですから、これでどうして生き続けられるのか不思議です。

  盛岡より積雪量がかなり多いわが家の敷地では、1bを超す雪の下で葉が腐ってしまうのではないかと毎年心配するのですが、そういうことはないばかりかあちこちに勝手に芽を出して増えています。植物の適応力には恐るべきものがあります。

  種をまいて球根を増やしたのですが鉢植えにしておくのもめんどくさく、5年前に地植えにしたところ一時は消滅するものがありましたが、残った株は元気で今年も自生地のような雰囲気で多数の花をつけました。そうは言っても、内陸より雪が少なくて冬も比較的暖かい沿岸地域の方が栽培適地ではないかと推測しています。広い面積に野生のシクラメンが咲き誇る場所ができればきっと観光名所になれるのではないでしょうか。種をまいて苗を造り、ある程度見栄えがする数の花が咲くまで5年ほどかかりますが、ツバキやヤマユリだけでなくこのような植物も魅力があると思います。ヘデリフォリュームは開花期間が2カ月も続くのも長所です。


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