盛岡タイムス Web News 2015年  11月 17日 (火)

       

■  〈詩人のポスト〉 「記憶の文脈」北里志郎

 

今にも朽ちて崩れそうな土橋の欄干に凭(もた)れ 川幅が雑草に占拠されて 遠慮深く流れる小川を見つめて 記憶の文脈を辿っていた 山蔭に陽の落ちるまで

かもめ飛ぶ北の国の 一本杉の見下ろす高台の校庭で 青い風に吹かれて子どもたちの言葉を紡ぎながら 荒ぶる心をときめかせていた

凄まじい吹雪が 木々を揺らす高原の開拓地の校長住宅で つくねんと草や木々の萌え出す季節を待って 「風の道」を綴るだけだった
やがて そこには静かな天があり 鳥も花も人も牛も うごめく風に醒めていた 手垢のつかない時間が動き出したことを信じて身悶えし 祈るばかりであった
訥訥と谷川の呟きが舞い上がってきた

山頭火は 時雨れる峠道でごろ寝し 果てしない草原の細道を黙々と踏み分け 疎林の向こうから唸る風にも耳を欹(そばだ)てて ひたすら歩き 占うことも迷うこともなかった

北国の村や町をとぼとぼと歩いて やっと荷を下ろして辿り着いた窯場(かまば)で きょうも日がな木漏れ日が揺れて手元の轆轤(ろくろ)と同調して回転する やがて 弾みでできた一枚の皿が職人たちの中に紛れて展示棚の片隅に 無垢な恥じらい顔して静座していた

遠くに残してきた記憶の接続語で わたしは何を繋いできただろう 懺悔(ざんげ)も後悔もないが まだ絶やしてはならないわたしの文脈は ここにある また とぼとぼと歩くだけだ



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