幼い時の交通事故で両足を失ったハンディを乗り越え、数々のスポーツに挑戦する盛岡市の鈴木勝良さん(65)。10月に念願だったパラグライダーのタンデムフライトに成功した。そのバイタリティーは驚くばかりだが、それ以上に心打たれるのは謙虚に自身を見つめ、感謝を忘れない人柄だ。
講演先で出会う、子どもたちの率直な質問に、はっとさせられることが多いという。ある男の子からは「自分をひいた運転手さんを恨んだことはありませんか?」と尋ねられた。
両足がないことで、悔しい思いもしてきた。確かに、恨んだ時期があったかもしれない。だが、今は「運転手さんも、きっと子どもをひいたことに負い目を感じている。もし自分が、トラックの前に飛び出さなければ、心に負担をかけることもなかった」と思う。
そう思えるようになったのは、ありのままの自分を受け入れられるようになったから。生きる喜びを感じているからだと気付いた。その証拠に、以前は必ず両足がある夢を見たが、あるときから、足のない夢を見る。「これが私。恥じることも、引け目を感じることもない」と胸を張れる。
何事も諦めず、思いを伝えていると、必ず見ていてくれる人、協力者が現れる。一つの挑戦が新たな仲間を呼び、次の挑戦につながる。今回も直接面識がない自衛隊幹部が、鈴木さんの願いを知人から聞き、インストラクターを紹介してくれた。「今まで自分の力だけでできたことは何一つない。本当にありがたい」。
来年に迫った希望郷いわて大会の水泳強化選手にも選ばれ、練習に励む鈴木さん。頑張る姿に勇気をもらう。大会には、障害を超えた命の輝きを知る大勢の仲間が集まることだろう。
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