盛岡タイムス Web News 2015年  12月 15日 (火)

       

■  岩手医大の分子治療研 Museの直接関与を解明 肝切除後細胞の修復・再生 片桐助教、西塚講師ら


     
   研究成果について会見する岩手医大外科学講座分子治療研究室の西塚講師(右)と高原武志助教  
   研究成果について会見する岩手医大外科学講座分子治療研究室の西塚講師(右)と高原武志助教
 

 岩手医大(小川彰理事長・学長)外科学講座分子治療研究室の片桐弘勝助教、西塚哲講師の研究グループは14日、多能性幹細胞の一種であるMuse(ミューズ)細胞が肝切除後の細胞の修復と再生に直接かつ独占的に関与していることを世界で初めて解明したと発表した。今後は生体肝移植などの外科手術後に、肝臓の再生・修復を早める目的でMuse細胞を血中投与する「細胞移植療法」などの発展に期待がかかる。

  同日に盛岡市中央通1丁目の岩手医大創立60周年記念館で開いた会見で、西塚講師は「Muse細胞の注射は手術や薬に替わるものではないが、手術に安全性が担保された細胞移植療法を組み合わせれば、次の治療へのステップになる。回復を見込むのが難しいケースにも寄与できるのでは」と今後の展望を語った。

  Muse細胞は、もともと骨髄や皮膚などヒトの細胞内に存在し、皮膚や筋肉、肝臓などのさまざまな細胞に分化できる幹細胞の一種。血中を循環し、さまざまな組織の細胞に変化し、体内で損傷した組織を修復する機能があることが知られていた。

  岩手医大では生体肝移植(ドナーから切除された肝臓を患者に移植する手術)の後、再生した肝臓の中に患者由来の遺伝子が一定数含まれていることに着目。肝臓の外部から肝臓の修復・再生に関する細胞が供給されている可能性について研究を進めてきた。

  実験では、肝臓を切除したマウスに、ヒトの骨髄に由来するMuse細胞を注射で投与。結果、Muse細胞のみが肝切除後の組織で肝臓を構成する細胞に分化したという。また、Muse細胞以外のヒトの骨髄由来細胞については、切除された肝臓に到達していないことも示された。

  Muse細胞は腫瘍形成のリスクが低いこと、元から体内に存在する細胞のためES細胞やiPs細胞など他の多能性幹細胞の課題であった倫理的問題や遺伝子導入の必要がないことなどから、早期の臨床応用が期待されるという。西塚講師は「今後は肝臓の再生するメカニズムも調べる」と話している。

  研究は岩手医大のほか、東北大、防衛医大との共同で実施。論文は日本時間で11日午後2時に、米国の移植学会誌(American Journal of Transplantation)のオンライン版に掲載された。


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