盛岡タイムス Web News 2016年  1月 11日 (月)

       

■  〈幸遊記〉261 照井顕 年始の合掌・南無阿弥陀仏


 2016年が始まったばかりだというのにもう二つの訃報。一つは2日、盛岡の片岡政樹さん(69)が、肺がんで亡くなったという知らせ。アルトサックスを吹き、たばこを吸い、酒を飲んでいたから、こんなに早く先立ったのか?と。僕自身も十数年前にたばこはやめたが、酒は毎日で、身につまされる。彼のお姉さんから聞いた話だが、戒名に使ってほしい3文字を自分で選び託していったという。そして寺の和尚さんは2文字を考え「慈保政楽善居士」と名付けて旅立たせたのです。保は片岡さんの仕事(保険事務所)から。政は自名・政樹から。楽は、大好きな音楽から。その上下に付けられた慈善は、正に仕事以外の仕事であり、趣味であった彼のジャズアルト奏者としての慈愛なる善行であったことを物語っていると思った。

  彼が僕の店、開運橋のジョニーで演奏を始めたのは2002年から。2004年1月14日に僕の店にTVの取材が入るというので、彼が北島貞紀(p)さんとバンドを組んで出演してくれたことをつい昨日のように思い出してしまうのだ。それがきっかけで翌月からは定期演奏。後にJW5という各パート2人の10人編成バンドを立ち上げ、さらには月1のセッションを企画し、若いミュージシャンたちを育て、プロとして飛び立つきっかけを作った立役者。穐吉敏子さんの前夫・故チャーリーマリアーノ(as)を敬愛し、店に来るといつも彼のレコードをリクエストした。また僕は彼のサックスソロをFMで放送したこともあり、彼の笑顔とスキャットはいつもジャズだった。

  二つ目は7日、陸前高田の遠野芳明さん(54)が亡くなったとの知らせ。彼は、僕が陸前高田から盛岡へ来た時、半年あまり店を手伝ってくれた人。もし店が順調にいって軌道に乗ったなら、店を彼に任せて自分は陸前高田に帰るつもりだった。しかし、店は大変で僕が残り、現在に至ったわけなのだ。彼は最近陸前高田にできたコミニュティーホールで働いていると聞き安心していたが、「心芳松信士」となって菅原聡の津軽三味線を聴きながら、地元ミュージシャンたちにも見送られての旅立ち。南無阿弥陀仏…。

  葬式から帰って店を開けたら、最初の客のリクエストが2015年12月31日亡くなったナタリー・コールの歌だった。(カフェジャズ開運橋のジョニー店主)



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