盛岡タイムス Web News 2016年  2月 2日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉245 及川彩子 ギター伴奏のミサ



     
   
     

 敬虔(けいけん)なカトリックの国イタリアでも、若者の宗教離れが進む昨今、毎日のミサに集うのは老人ばかり。また難民・移民増加に伴い、イスラム教をはじめ、他宗教を身近に感じるこの頃は、イタリア人の中にも改宗したり、無宗教の人も少なくありません。

  私の住む、アルプスの麓の観光地アジアゴでは、移民を制限しているため、古い伝統や習慣が残っていますが、ここ数年は、「教会に行くのは、クリスマスだけ」などと豪語する若者も増加の一途。毎日曜、あちこちの街の教会でオルガンを弾いていると、それが容易に理解できるのです。

  また、ラテン語のミサ曲などをレパートリーとする聖歌隊も、「堅苦しい」と人気が低迷。そこで、気軽に音楽を楽しむ若者たちにも受け入れやすい、ギター伴奏のポップス調にアレンジしたミサ曲やイタリア歌謡の教会音楽が流行し始めているのです。

  私の長年の友人でギタリストのドナテッラも、その活動に乗り出した一人。アジアゴから15`離れた、彼女の住む過疎の村には、地元の教会オルガニストがいないこともあり、村を活気付けるためにも、「若者たちで教会に音楽を」と立ち上がったのです。

  さっそく地元の小学校に赴き、無償でギター教室を始めては、若きギタリストを養成、夜には、家族参加型の合唱団を指導…そして数カ月後の先日、初登場のミサに招かれ、出掛けていくと、かわいらしい3人の少女がギターを抱え、そわそわ出番を待っていました。

  軽快にアレンジされたミサ曲が、ギターのリズムに乗り、爽やかな朝の教会を包みます。少女たちのつま弾くアルペジオの背景に、気負いはありません[写真]。

  私にとって、荘厳なオルガンの殿堂であった教会音楽が、流行のビートに様変わり…けれども、ドナテッラのギターがけん引する若者のハーモニーは温かく、改めて、ミサに集う意味を教えられたのでした。


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