盛岡タイムス Web News 2016年  2月 16日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉246 及川彩子 イタリアの消防・警察


     
   
     
  イタリア生活も今年で20年。幸い、大きな事故や災害も経験することなく過ごしてきましたが、年明け、向かいの集合住宅が火事になるという出来事がありました。深夜に発生した火事は、明け方まで続き、懸命の消火活動にもかかわらず、ほぼ全焼でした[写真]。

  昨年できたばかりの、その集合住宅は、全5世帯。完成までに5年。木造と積み石を組み合わせたチロル地方の伝統的デザインに、全世帯暖炉付き。新築当初から評判を呼び、別荘として即完売。休日ともなると、どの窓も開き、冬の暖炉でバーベキューをしては山里暮らしを楽しむ様子でした。

  出火原因は、皮肉にも暖炉。火の後始末というより、熱を帯びた煙突の周囲の木片から出火したのだそうです。人の被害がなく、飛び火もなかったのが幸い。けれども、予期せぬ不幸に身が引き締まる思いでした。

  鎮火しても、昼夜問わず現場を見張り、活動に当たる消防隊。イタリアでは、水道管が凍っても、犬が死んでも、警察より消防を呼ぶほど、消防隊への信頼は厚いと言われます。イタリア語の「ヴィジレ・デル・フォーコ」は「消防・警察」のことです。

  古代ローマの皇帝が初めて組織したと記録されるイタリアの消防隊は、今は、世界でも珍しい国の直轄組織で、消防士は国家公務員。いまだ記憶に新しい10年前の、ローマ近郊の街アクイラの大地震の際、全市街地を立ち入り禁止にし、全人口7万人を遠隔地ホテルに即移動させたというまれに見る救助作戦は、国組織ゆえの成せる技だったそうです。

  どの街も「美術館」と言われるこの国での活動は困難ですが、命ばかりでなく、世界の遺産を守る責務がプライドでもあるのです。

  平穏な日常が繰り返されるのは、無意識な安心感があるからです。ご近所、お隣さんと交代で、気さくな消防士に温かい飲み物を配りながら、忘れかけていた「感謝」の思いでいっぱいになりました。



本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします