盛岡タイムス Web News 2016年  2月 24日 (水)

       

■  〈日々つれづれ〉314 三浦勲夫 子祝い孫祝い


 小岩井農場の人気アトラクションに「羊ショウ」がある。牧羊犬(ボーダーコリー)が羊の群を囲いに追い込む。英国の湖水地方の山道で、実際の光景を見下ろしたことがある。コリー犬だったが、映画のような牧歌的光景だった。

  小岩井農場でも、ショウ以外に日常行われているのだろう。ここに一昨年5月の写真がある。家内と幼い孫がベンチにかけて、ショウの開始を待つ後ろ姿を、娘が撮影した。昨年、未(ひつじ)年に次男が生まれた。兄はウサギ、卯年である。なんとなく縁起がいい写真で、見ていると、吉日めいた言葉が思い浮かぶ。

  羊自体が縁起が良いらしく、吉祥、祥雲、飛翔などの文字に羊がある。「祥」は「めでたいものを現す」意味で、音読みの「ショウ」は英語のshowと同じである。「羊ショウ」も「羊祥」の当て字ができる。ゲーム感覚である。2人の視線の方向にはボーダーコリーと羊係の男性が立っていて、これから「ショウ」が始まるところである。「未(ま)」だかと待つ「羊翔」である。

  それかあらぬか、翌年に弟が生まれた。写真は5月、大型連休の直後である。今は立春を過ぎたとはいえ、まだ2月である。雪が降ったり、20度の暑さになったりする。冬と春とのせめぎ合いは、3月、4月まで続く。本格的な春は、桜が咲くころとなる。それまでは、寒の戻り、春一番、春雨、南風(はえ)と言うように、波状的に暦は進む。

  冬の後退をさして誰が言ったか、「二月逃げる、三月去る」がある。日本式アリタレーション(頭韻)である。英語で言えば、 "Frozen February flees far away, March leaves mad and mild"だろうか。意味は「凍った2月は遠く逃げ、3月荒れたり晴れたりしては去る」。英国では「3月は野ウサギのように去り、4月は獅子のように来る」と言う。野ウサギ、すなわち脱兎(だっと)のごとく、かと思われる。日本では、「獅子は鼠を捕るにも全力を尽くす」ともいう。それを連想させるのは異文化的発想だろう。

  英語で「3月ウサギのように狂わしい」(mad as a March hare)と言うのはウサギの発情期だから、とされる。3月は気候も荒れ狂う。4月もそれは続く。エリオット(1888〜1965)が「荒地」で言う「4月は残酷な月」は、チョーサー(1343〜1400)が「カンタベリー物語」の序章で言った「4月の優しい驟雨(しゅうう)」に対する「反語」であるが、実際4月はその両面を持つ。「四月の獅子」とも言えるだろう。洋の東西に分かれる日本と英国は、季節的な共通点も多く持つ。

  5月には春爛漫(らんまん)となる。小岩井農場の「羊ショウ」も「子祝いの羊祥」みたいになる。雪まつりも、天の川観測も、紅葉も花見も「子祝い」である。親子連れで楽しむ。天文台で天の川も見たくなる。今年の雪まつりは雪不足で苦労したが、30年以上も前には、若い自分が子らを連れて雪まつりに何度か行った。

  「日本における英国年(国交百年記念)」の際には、農場いっぱいを使った日英芸術展が開かれた。日英の芸術家たちのパネル・ディスカッションで通訳もやった。スコットランドなまりには手を上げた。孫たちが、来れば「孫祝い羊翔」である。(岩手大学名誉教授)


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします