盛岡タイムス Web News 2016年  3月 15日 (火)

       

■  〈詩人のポスト〉 「暗黒の海」金野清人



春まだ浅き3月11日
白砂青松の高田松原は
未曾有の巨大津波に呑まれ
すっかり消えてしまった

古里の高田松原は波濤に揉まれ
一気に崩れ
一瞬すべての輪郭が水に揺らめいて
跡形もなく消えはてた

少年の頃竹馬の友と泳いだ海岸に
若き日妻とそぞろ歩いた浜辺に
いきなり怒り狂った波頭が牙を剥き
ごうごうと、ごうごうと
得体の知れない獣のような唸りをあげて
襲いかかってきたのだ

はるか太古からの遠音なのか
それとも耳の底からの幻聴なのか
ごうごうと、ごうごうと
波頭は水煙と土煙を交ぜて立ち上がり
遠浅の砂浜を彩る七万本の青松を
根こそぎなぎ倒し
白砂をえぐり取ったのだ

非情無比にして荘厳
人智では制止得ない力が
満腔の怒気を込めて
襲いかかってきたのだ

巨大津波は地鳴りと海鳴りの底から
わたしたちに告げてきた
  ひとよ、われに恐懼せよ
  ひとよ、おもいあがるな

わたしはあふれる涙をこらえて
恐怖を超えた畏れの目で
ただただ呆然と見詰めた



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