盛岡タイムス Web News 2016年  4月 19日 (火)

       

■  〈おらがまちかど〉93 盛岡市 仙北1丁目地内 地域の絆深める「敬治桜」 毎年春に花見会 明治橋下流河岸の並木(馬場恵)


     
   「敬治桜」の異名も持つ、明治橋たもとの桜並木。桜を見ながら、親分肌だった敬治さんをしのぶ鈴木旭さん(右)ら  
   「敬治桜」の異名も持つ、明治橋たもとの桜並木。桜を見ながら、親分肌だった敬治さんをしのぶ鈴木旭さん(右)ら
 

 盛岡市仙北1丁目、明治橋下流右岸の桜並木。北上川脇の自転車道に沿って植えられたソメイヨシノなど14本が毎年、地域の人たちの目を楽しませている。北上川を挟んで対岸は、市指定有形文化財の「御蔵(おくら)」。藩政時代は船着き場としてにぎわった場所だ。晴れていれば、桜と同時に岩手山と明治橋も眺められ、知る人ぞ知る春の散策スポットになっている。

  この桜は、明治橋たもとにある燃料店鈴木商会の先代社長、故・鈴木敬治さんが昭和40年代に植えた。鈴木さんは1924(大正13)年生まれ。親分肌で町内会や消防団の要職を引き受けていた。河川敷と堤防の間にできたスペースを生かしたいと、近所の種苗店・山清商店の跡取り娘で同級生だった故・前澤マサさんに相談。「どうせ植えるなら桜がいい」と前澤さんが苗を都合した。

  桜は順調に成長。毎年、美しい花を咲かせるようになったが本来、堤防内への高木の植栽は禁じられている。このため、川を管理する役所の職員がたびたび、伐採を促しにやって来た。

  だが、鈴木さんは「自分たちで植えたものを切るわけにはいかない。やるなら、そちらでどうぞ」と粘り、譲らなかったという。役所も無理に切り倒すわけにはいかなかったようで、多くの市民の目を引く桜並木に育った。いきさつを知る地域の人たちは「今も黙認状態だと思います」と頭をかき、親しみを込めて「敬治桜」と呼ぶ。剪定(せんてい)や草刈りも協力して取り組む。

  地元の仙北1丁目第2町内会「仙睦会」は毎年、敬治桜の下で花見をする。高齢化が進む一方、新しいマンションや住宅が増え、昔ながらの町内会活動がだんだん難しくなってきた。気軽に参加できる花見には、互いの距離を縮め、絆を深める狙いもある。

  鈴木さんの弟で、鈴木商会社長の旭さん(72)は、仙睦会会長を務める。「桜は人の心をくすぐり、仲を取り持つ、いい媒体。縁あって、この地に住む人は、ここから、あの世へ旅立つ。元気なうちに仲良く交わったほうがいいでしょ」と笑顔で語る。
(馬場恵)


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