盛岡タイムス Web News 2016年  5月 11日 (水)

       

■  農作物の鳥獣被害防ごう 普及と効果じわり 上席農業普及員 中森忠義さん考案 省力化「恒久電気柵」


     
   盛岡市のリンゴ園周辺に電気柵を設置する様子=八幡平市農業改良普及センター提供、14年撮影  
   盛岡市のリンゴ園周辺に電気柵を設置する様子=八幡平市農業改良普及センター提供、14年撮影
 

 5月に入り田植えシーズン到来。県内各所の農家は繁忙期を迎えているが、野生動物が県域の7割を占める山間部から人里に降りることが心配される。例年県内のトウモロコシ畑や果樹園では、ツキノワグマやニホンジカによる農作物被害が発生。丹精込めた作物を守るため、盛岡市や紫波町、岩手町では、農水省の2015年度鳥獣被害対策優良活動表彰農村振興局長賞を受賞した「恒久電気柵」を使う被害対策が広がりを見せている。

  農水省の野生獣被害対策では、集落全体を「良い餌場でなくす」対策を目標としている。野生動物の追い払いや捕獲が主な対策だが、県内の畑は自宅と20`以上離れ、住民不在の場合も多い。獣除けのフェンスも降雪で倒れ、効果は薄かった。

  農作物野生鳥獣被害対策アドバイザーの中森忠義上席農業普及員は地域の状況を考え、新たな電気柵の利用方法を考案。これまでの電気柵は、巻き取り可能なポリワイヤーと簡易電気柵で野生動物の侵入を阻んでいた。しかし、冬場にワイヤーが破損。毎年設置と撤収を繰り返す手間があった。

  考案した電気柵は高張力鋼線を使用。一度設置した後は撤収せず、降雪期はワイヤーを地面に降ろし破損を防ぐ。中森上席農業普及員は八幡平市農業改良普及センター管内で実証。ヘクタール単位の大面積・積雪・住民不在という条件下で、1千万円以上の被害額減少効果を表した。

     
   考案された恒久電気柵=八幡平市農業改良普及センター提供、15年撮影  
   考案された恒久電気柵=八幡平市農業改良普及センター提供、15年撮影
 

  岩手町では15年度、25農家が恒久電気柵を導入。設置面積は計103f。年々導入面積が広がっている。盛岡農業改良普及センターにも方法を指導。盛岡市黒川や紫波町長岡のリンゴ園、盛岡市上米内の田んぼなどに導入されている。

  盛岡市は国や県の補助事業を活用し、恒久電気柵導入を支援。同市はニホンジカによる被害が最も多い。ニホンジカは、冬場もリンゴの樹皮や新芽を食べ秋の収穫に影響を及ぼす。同市猪去では、ツキノワグマやイノシシ被害も発生。大きな被害を出している。

  導入後、農家からは畑周辺の足跡が消えたと報告があった。同市でも効果が実証され、今後は普及が遅れている地域への導入支援をする方針だ。

  中森上席農業普及員は「鳥獣被害は切実な問題だ。農家は生活が懸かっている。1年間育てた作物が、食い荒らされるのは精神的にもつらい。他県で自作電気柵の事故があったが、メーカー製品を正しく使えば危険はない。地域に合った対策で、農家の負担を減らしたい」と語る。


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