盛岡タイムス Web News 2016年  5月 21日 (土)

       

■  〈体感思観〉編集局 藤澤則子 文学が熱い夏


 「芥川って、格好いいよね」まるでアイドルか人気俳優を語るように、身内の中学生女子から思いがけない名を投げ掛けられ、「龍之介?」と聞くと、「そう」と言う。

  次いで太宰治、中島敦らの名前を挙げ、「『人間失格』読んでみたいなぁ」とも。聞くと、文豪の名のキャラクターが登場する人気漫画から興味を持ったらしい。どんな情報や映像(動画)でも、インターネットを通して日常的に手に入れられる彼女たちが、一冊の本を手に取るきっかけを得るのはうれしい。

  若い世代に文学の熱が高まっている。そう実感したのは先日、2015年度二つの「短歌甲子園」(宮崎県日向市、盛岡市で開催)に部員7人で参加した盛岡二高文学研究部(文研部)を10カ月ぶりに訪ねたとき。

  部室の扉を開けると、パソコンに向かって真剣に作歌に励む生徒がずらりと30人ほどいて、驚いた。

  歌人・大西民子(192494年)を輩出した同高。文研部も長い歴史があるが、部員不足に悩まされた年も。昨年7月の取材の際、当時3年の部長・番澤芹佳さんが「部員がほぼ1人というときもあったが、諦めないでよかった」と、困難を乗り越えての全国切符を喜んでいたほどだ。

  顧問の菊池陽教諭(64)も「たくさんの応援が生徒の励みになって…やはり部員が増えるといいですね」と破顔し、部の活況を喜んだ。

  今年度は「少しホラーが入った作家が好きで読んでいるけど、太宰も面白い」という部長の佐藤楓さん(3年)を中心に活動。8月に盛岡市で開かれる第11回全国高校生短歌大会(短歌甲子園)の予選審査に向けて、短歌作りに励んでいる。

  盛岡四、盛岡三など本県高校文芸部員が幾度も最優秀賞に輝いている全国高校文芸コンクール(全国高文連など主催)の募集開始も8月に控え、高校生の「文学の夏」はもう始まっている。

  そんな若い世代の文学活動に期待しているのは、9月4日に盛岡市・県産業会館で東北初の「第1回文学フリマ岩手」を開く同岩手事務局代表の小田原聖さん(30)。書き手と読者が交流し、地域に「文学の担い手」を増やしていこうというイベント。「啄木・賢治ゆかりの盛岡での開催。大学生、高校生にもぜひ参加してもらいたい」と期待している。

  文芸部で活動する高校生はもちろん、漫画やアニメをきっかけに一冊の本を手に取る中学生も、岩手の文学を担うみずみずしい若芽かもしれないと思う。

 


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします