盛岡タイムス Web News 2016年  5月 31日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉252 及川彩子 「ヒジャブの少女」


     
   
     

 異国生活も長くなると、懐かしいはずの日本の光景に、どことなく違和感を抱くようになります。成田空港から、東京駅の人混みをかき分けて乗り込む新幹線…。それが風景やしぐさやでないことだけは確かです。

  先日、ここイタリアの街角でイスラムの少女たちが化粧のデモンストレーションを楽しむ様子を見かけました。イスラム女性の義務、髪を覆うヒジャブ(スカーフ)姿に似合うエキゾチックな化粧にはしゃいでいました。

  イスラム教では、肌を露出する服同様、化粧は禁止のはず。祖国に帰ったら刑罰…そんな要らぬ心配を抱きつつ遠巻きに見ていると、どこ吹く風の少女たちは、このファッションの国を謳歌(おうか)。その姿に勇気をもらうようで、ほほ笑ましく眺めました[写真]。

  ヒジャブの少女と言えば、2年前、17歳でノーベル平和賞を受賞したパキスタンのマララさん。「女性にも権利を」と声を上げたが故に銃撃され、イギリスで保護されるという危険な立場にありながらも、最近は「女性の教育の重要性」について発表したばかりです。

  イスラム教の教えでは、女性は慎み深く家にいること。コーランにはさらに「男は女より上位。アラーが優劣をつけ創った」と書かれてあるそうです。けれども現代を生きる彼女たちの行動は、信仰を捨てるのではなく、ヒジャブをまとう女性としての「尊厳」を訴えることに価値があると思うのです。

  ここ数年、難民受け入れやパリ連続テロなど、混沌とした局面を迎える欧州。イタリアは南にアフリカ、東にイスラム圏と、位置的にも歴史的にも、他国と複雑に絡み合ってきました。もはや単一民族では成長しえないことを一番知っている国です。

  黒人、白人、アジア人やヒジャブの少女が入り混じる街に暮らす私は、日本の空港に降り立った瞬間、日本人に囲まれる安心感と同時に多民族の重い足かせを失ったような、心細さを感じているのかも知れません。
 


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