盛岡タイムス Web News 2016年  9月  10日 (土)

       

■ 〈体感思観〉馬場惠 がんを知り命と向き合う


 
 県立胆沢病院管理栄養士で、がん病態栄養専門管理栄養士でもある蛇口真理子さんは、食を通して患者一人ひとりに寄り添う仕事をしている。末期がんなどで食事が進みにくくなった患者に、調理方法や見た目を工夫し、その人が食べたいと思うものを届ける。

  終末期の患者が望めば、病院内でもビールやワインを添える。病院で銀婚式を迎えた患者に手作りのカードを添え、たくさんの種類を一口ずつ味わえるお祝い膳を出したことも。余命わずかとなった男性からリクエストされたのは、幼い頃、母親がよく作ってくれた塩おにぎりだった。

  「食べ物には人生が織り込まれている。人生の物語を大事にしたい。その思いに寄り添うことは、患者さんの最期を支えるだけではなく、生き方を教えていただく時間でもある」と蛇口さん。「一つのお膳、一つの食べ物を通して、あなたが大切だという思いを伝えたい」と語る真摯(しんし)な姿勢に、いつも心打たれる。

  7月、蛇口さんを講師に迎えた岩手ホスピスの会主催の栄養講座には、盛岡二高家庭クラブ委員会のメンバー4人の姿もあった。減塩食のレシピ開発や、がん患者のためのタオル帽子作りへの協力などを発表するため、初参加。ステージ上での発表も素晴らしかったが、それ以上に印象的だったのは、講座後の茶話会でのがん患者やその支援者とのやりとりだった。

  参加者からは「いろいろな世代、立場の人との出会いを大事にしてほしい」「若い時期に、がんや終末期の患者さんの話に触れた経験は、大きな財産になると思う」など彼女たちを歓迎し、励ます言葉が相次いだ。

  こうした場に、高校生が加わる機会は少ない。若者が、その場にいること自体に力をもらった人も多かったに違いない。彼女たちも目にいっぱい涙をためながら、語られる言葉一つひとつに耳を傾けていた。

  がんと向き合うことは、その人の命や生き方と向き合うことでもある。年齢にかかわらず、関心を持つべきテーマだと改めて感じた。


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします