盛岡タイムス Web News 2016年  9月  16日 (金)

       

■  〈潮風宅配便〉318 草野悟 サンマ究極の食べ方は焼き


     
   
     

 迷走台風による被害は恐ろしいものでした。そんな中、宮古にも大船渡にも続々とサンマが水揚げされてきました。9月の初めごろは特大サイズ1匹300〜400円と高値でした。小さなサイズでも200円を超え、庶民の魚と言われた時代が遠く感じます。

  それでも秋にサンマは欠かせません。鮮度のいい獲れたては刺し身がポピュラーですが、焼きはサンマの究極の食べ方と信じています。はらわたに火をしっかり通して焼く技術が最も難しいとされています。ある料理屋の巨匠は、腹に数回ようじで刺してから焼くと言っていましたが、八幡町にある居酒家「里伊」の伊勢店長は、身の境目にしっかり包丁を入れることで、じんわりと腸に火が通ると言います。この写真は伊勢店長の作品です。見事にウエーブを効かせ、いかにも泳ぎそうな気配に焼き上げる技術は拍手喝采です。

  当然のごとく腹から箸を入れて内臓を引き出し、からみ大根おろしにしょうゆをちょっとつけて内臓と一緒に口に運びます。何とも言えない苦みと芳香とした秋の気配が口の中に広がり、止めどもなく流れ落ちるよだれと絡まってきます。何という素晴らしい幸福のひとときでしょうか。熱々のまだ湯気が立ち上っているうちに箸を入れることが肝心です。秋をたっぷり味わってから、おもむろに真ん中の身をはがします。ぱさぱさせずに、しっとり感が残る至福のサンマの身肉はどこまでも澄んだ秋空のようです。付け合わせの「ミズのコブ」がさらに秋色感を演出してくれます。やっぱりサンマなのです。

  ニュースで、外国船団が大量に獲ってしまい、今年も不漁の予感と流れていました。日本の領土ぎりぎりのところまで、すごい数の船団が押し寄せているそうで、「人の家の近くまで来て」と怒り心頭なのですが、よく考えると、日本の船団も世界の海を縦横無尽に往来してきたのですから、他人のことだけは言えないな、と反省もちらりと脳裏をかすめます。とはいえ、サンマの季節感など知らないだろう、とやっぱり怒ってしまいます。了見が狭い私ですのでお許しいただきたいのですが、新鮮でこの上なくおいしいサンマは、やっぱり日本人のものですよね。
   (岩手県中核コーディネーター)


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