盛岡タイムス Web News 2016年  9月  17日 (土)

       

■  〈体感思観〉大崎真士 ぬかるみと闘って


  床上浸水した住宅内には粘り気のある湿った泥が隅々まではびこっていた。14日、災害ボランティアとして岩泉町安家を訪ねた。台風10号発生以来、初めて入った岩泉。水をかぶった家財道具が沿道に積み上げられ、大量の泥がかき出されていた。午前中作業していたお宅はちょうど電気が復旧したばかり。発生から半月経っても復旧の進んでいない実態に、被害の甚大さと復旧の険しさを思った。

  国道455号が全線再開され、盛岡市中心部から岩泉町森の越の災害ボランティアセンターまで車で2時間かからない。途中、早坂トンネルを過ぎると辺りは一変する。小本川水系が氾濫した爪痕が至る所で垣間見える。

  森の越のボラセンには14日、県内外から私を含め60人がボランティアとして活動した。活動日前日、どの地域が人手不足かボラセンに電話すると「どこも足りません。朝8時半から登録を始めてます」と返事があった。小川、小本の各地域で活動するサテライトが別にある。

  安家へは14人が選抜され、町社協のボラバスに約30分揺られて役場安家支所前へ。さらに活動先が割り振られた。安家は今週やっとボランティアが入ることができる状況になった。

  午後、安家郵便局の並びにある住宅で仏壇の洗浄を任された。一般男性の身長並みで、意匠の施された立派なものだった。千葉県から有給休暇を取って連日活動している女性と作業に当たった。

  泥は大小のすき間というすき間に入り込んでいた。高さの3分の1以上が水浸しになって半月。家の中にあったとはいえ、泥はねっとりとして冷たかった。収納スペースの泥を素手でかき出した。独特なにおいのする泥が顔や腕に付いた。

  一日はあっという間で、全てきれいにできなかったことをわびると、家主は「そんなことはない。来てくれてありがとう。助かった」と、私をねぎらってくれた。先週まで自力で片付け作業をした疲れ、復旧の見通しの立たない不安もあるだろうに、初対面の私に向けられた感謝の言葉。やるせなさに胸が支えた。

  半月経っても、遅過ぎることはない。助けが必要とされている。


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