盛岡タイムス Web News 2016年  9月  20日 (火)

       

■  盛岡市の書家 鈴木有希さん 墨痕に人生の証 BS「皇室のこころ」題字揮ごう


     
   
   書道は「母からもらった宝物」、「生きる道」と前を見据える鈴木有希さん
 

 盛岡市新田町の鈴木有希=雅号・鈴木結葵=さん(32)は高校の書道の非常勤講師を務めながら、書家としての独立を目指し挑戦を続けている。今月、BSフジで全国放送されたドキュメンタリー「皇室のこころ」の題字や場面タイトルの揮毫(きごう)を担当。全国の人に自身の書を見てもらうチャンスに恵まれた。夢を諦めずに努力し「生徒たちや書家を志す後輩たちの手も引っ張れるような存在になりたい」と意欲を燃やす。

  鈴木さんは母親の勧めで6歳から書道を始めた。岩手大教育学部で書道を専攻。在学中は全日本高校大学生書道展で大賞を受賞するなど活躍した。卒業後は書道を離れ、東京のホテルやアパレル会社で働いていたが、東日本大震災と祖母の病を機に帰郷。生き方を見詰め直した。

  転機となったのは震災の翌年に始めた盛岡市の保護庭園一ノ倉邸でのボランティア。一ノ倉邸管理保存委員会の西郷和子会長に「絵を描くように楽しく、今のあなたを表現しなさい」と背中を押され、書と再び向き合った。

  一ノ倉邸の醸し出す自然な和の雰囲気にも感化され「自由に新しい線を工夫し、生み出す楽しさを感じるようになった」という。2012年11月には初個展「書と秋│あそび展」を一ノ倉邸で開催。書家として生きる覚悟を決めた。

  とはいえ、書で食べていくのは、なかなか厳しい。非常勤講師や料亭でのアルバイトを続けながら作品づくりに励む。そんな中、舞い込んだのが「皇室のこころ」の仕事。番組のチーフディレクターと偶然、知り合い、作品を送ったところ「任せる」と言われた。

  天皇陛下の生前退位について掘り下げる重厚なドキュメンタリー番組。生前退位について陛下が語った全文を読み込み、皇室に関し、調べられるものは全て調べて筆を握った。制作サイドからは「血判状ぐらいの力強さがほしい」との注文も。徹夜を重ね、力強さの中にも柔らかさが感じられる書を仕上げた。プロの仕事の難しさを思い知ったが、自身のキャリアを広げる確実な一歩となった。

  「書家としてやっていくなら、自ら肩書きを作っていかなければいけない。一つひとつが試されていると思う。今後の仕事にもつながるよう出せる力を振り絞り、一生懸命、取り組んでいきたい」と鈴木さん。「この人の字だと分かるような自分らしい字を書きたい。一方でクライアントの要望に柔軟に応えられる力も付けたい。仕事を受けるたびに成長していけたら」と前を見据える。
(馬場恵)


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