盛岡タイムス Web News 2017年  1月  26日 (木)

       

■  県内農業者 TPP米離脱に波紋 自由化阻み安堵も 2国間の外圧を警戒


 米国のトランプ大統領のTPP離脱の大統領令を受けて、県内農業に波紋が広がっている。国内産業保護のためTPPの無効化を歓迎しながら、新政権がさらなる外圧を日本に加える可能性を危惧する。TPPは昨年2月、環太平洋経済連携協定として日米豪など12カ国が合意したが、米国離脱で発効は極めて難しくなった。代わりにトランプ大統領が2国間交渉を進めた場合、日米摩擦の再燃が懸念されている。

  TPPに対しては2013年以来、県内の農協関係者や市民団体がそれぞれの立場から反対し、街頭や集会で意思表示してきた。関税撤廃により、輸入農畜産物が国内の第1次産業を圧迫すると、県民世論に訴えた。

  県農協中央会の畠山房郎常務は、「日米の2国間交渉で米国の利益をさらに押し出してくることも考えられる。トヨタがメキシコに工場を作る件で自動車の話があったが、米国が日本に一番売りたいものは農畜産物だろう。米国の農業者はトランプ大統領にとても期待していると聞く」と話し、警戒感を示す。

  県農民連、県農協労組、県生協連などによる「いわて食・農ネット」は、これまでTPPに反対し、盛岡市内の街頭で定期的にキャンペーンを張ってきた。岡田現三事務局長は、今回の米国離脱を受け、「安心してばかりはいられない。日米でFTAのようなことになれば、厳しい要求が突きつけられるかもしれない」と話す。

  その一方、「今回の米国の判断でTPPが漂流するに至ったのは、世界的な動きと連帯した日本の農業者の取り組みが反映された」と話し、運動の成果と受け止める。今後の取り組みについては「TPP反対のスローガンでやることはないが、米国の出方によっては地域の農業と食糧の安全を守るための宣伝をする」と述べ、今後の出方を見守る。

  TPPによる畜産への影響が懸念された県内の和牛生産者の間には、米国の離脱に対して安堵(あんど)と不安が入り交じる。

  雫石町の雫石牛肥育部会の坂井尚樹部会長は、「消費者に輸入牛肉に比べて国産牛が高いという印象をさらに与えてしまうのではと心配していた。(離脱で)現状維持となったが、消費者の立場を考えると複雑」と話す。

  「現在の素牛価格の相場を考えると国内の肥育農家は厳しい状況にある。今後、米国との2カ国間交渉になった場合に厳しく条件が出され、生産者がこれまで以上に厳しい状況になるのでは」との不安もあるという。

  一方、冷静に状況を見詰める生産者もいる。滝沢市柳沢で漢方和牛を生産する伊藤牧場の伊藤忠社長は、「今は足固めの時。現状維持となっているが、TPP交渉以前から米国産牛肉など安価な品が店頭に並んでいる。今回のことがなくとも、国内の生産者にとって輸入牛肉が大きな脅威であることに変わりはない。必要なのは消費者に受け入れられる牛肉をいかにして生産するか。そのためには、輸入牛肉との差別化を進めなくてはならない」と強調した。


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