盛岡タイムス Web News 2017年  3月  25日 (土)

       

■ 〈体感思観〉 編集局 山下浩平 人生を紡ぐ言葉


 
 「自分を追い込まなければ、文章を生み出すことはできない」。中学時代、学級担任だった国語教諭が授業中に話した言葉だ。先日発表された教職員の人事異動で、その先生が滝沢市内の小学校長に4月から赴任することを知り、ふと思い出した。

  今、その言葉について考えてみると、ある事象に対して自分なりに、考えを突き詰め、その先に残る一握りにこそ価値がある、という意味だったのではないだろうか。一方で最近の取材を通して、これにはもう一つ先の意味があると感じた。

  俳人の小原啄葉さんが矢巾町の名誉町民に選ばれ21日、高橋昌造町長から顕彰状が贈られた。車いすに乗っているものの、今年の5月で96歳になるような方とは思えない風格が漂っていた。

  顕彰状を受け取った後の謝辞では、時折、間を置きながら、整った脈絡とその場にふさわしい言葉を選び、考えをまとめ話していたのが印象的だった。

  俳句に関する知識は無に等しいが、確かなことは、このコラムよりも、はるかに少ない文字数で考えや感情、情景を表現しなければならないことだ。「体感思観」は毎回800字前後で、各記者がようやく自分の考えをまとめているが、俳句は5・7・5で基本17字。もちろん、俳句の場合はそこに込められたものに思いを巡らせる楽しみがあると思うが、だからこそ上句・中句・下句それぞれに使う言葉は思考を重ね考え抜いて選ぶものではないだろうか。

  小原さんは「功績は持ってなく、長く続けてきたことが取りえ」などと謙遜していたが、一方で「岩手の俳句の発展のため、少しでも貢献したい」「俳句一筋でやってきた」という言葉の一つ一つからは自身の人生、積み重ねてきたことへの自負がにじみ出ていた。

  少年時代に俳句を始めたという小原さん。これまでに創作した作品の数と俳壇に与えた影響は計り知れない。ただ、熟考の先に選ぶ言葉にはその人の人生が表れ、また、言葉を選ぶために思考を巡らせる過程が、豊かな人生を紡ぐことにつながると感じた。


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