盛岡タイムス Web News 2017年  3月  27日 (月)

       

■  孤立集落の安全へ提言 台風10号で久慈市の事例 齋藤岩大名誉教授 住民に意識・行動調査


 豪雨や豪雪、地震により道路が寸断されるなどして孤立する過疎集落について、どう安全対策を図るか。齋藤徳美岩手大名誉教授は2016年の台風10号災害で被災した久慈市山根地区の全世帯を対象に実施した意識・行動調査の結果を公表した。それによると、回答した世帯のうち台風上陸を知りながら行政の発令した避難勧告を認知したのは半数にとどまった。80%が避難せず、69%が一時的に孤立した。

  集落の孤立については、盛岡地域でも2010年12月末から11年1月の大雪で発生した。雪や倒木による道路の寸断、大雨による橋の流出などによる孤立は、県内のどこででも起きうる。

  齋藤教授によると、山根地区は16年11月時点で11集落に176世帯339人がいた。高齢化率は58・7%と高い。各集落は長内川に近い県道沿い、山間部の大きく2種類に大別される。

  久慈市は台風の上陸した16年8月30日午後4時30分に市内全域に避難勧告を発令した。山根地区は対象外だったが避難指示時も一部に出された。地区内の下戸鎖集落は時間雨量80_を記録。長内川や支流があふれ、1人が犠牲になった。家屋の流出や全壊、浸水被害が起きた。

  調査は16年12月に実施。豪雨時に住民へ情報がどう伝わり、どう行動したかについて、全世帯を対象に11区長が聞き取りする形式で行われた。7割に当たる123世帯から回答が寄せられた。

  その結果、83%が台風10号の本県上陸を事前に知っていた。ただ、勧告や指示の発令を知っていたのは回答世帯全体の50%。情報収集の手段はテレビが32%、ラジオが9%、防災行政無線が48%だった。

  避難の有無を問うと、避難したのは回答世帯全体の20%で、このうち指定避難場所へ避難したのは3割にとどまった。

  避難しなかった理由については「自分の住宅が安全」65%、「避難場所に移動するのに危険を感じた」17%、「自力避難が困難だった」10%、「避難場所がむしろ危険と感じた」4%など、高齢化の進む過疎地域の実態が反映された。避難場所が床上浸水の被害を受けた集落もあった。

  地区では山間部集落は被害も避難者も少なかった一方、回答者の93%が孤立を経験。県道沿い集落は被害も避難者も多かったが、孤立は52%だった。

  齋藤教授は同地区各団体で構成され、総務省事業に取り組む山根六郷の里協議会に外部有識者として参画している。

  調査を通じ「防災情報を確実に直接、各世帯へ伝えるシステムの構築」について必要性を強調。久慈市が地区全域に光ケーブルを敷設していることから「IoT」の活用を提言する。

  災害発生後、特に夜間に避難所へ移動する危険性や避難所そのものが避難先として適切かも指摘する。集落内の安全な住宅へ一時的に待機・避難し、避難行動情報を行政の支所などに伝える相互伝達機能の必要性も訴えている。


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