盛岡タイムス Web News 2017年  4月 9日 (日)

       

■  高齢者の足爪 長生き「フットケア」から 介護予防に導入施設も 専門ワーカーが活躍


     
   盛岡市のディサービスかたらいの家・ゆうで、入所者の足爪の手入れをするフットケアワーカーの武蔵加乃子さん  
   盛岡市のディサービスかたらいの家・ゆうで、入所者の足爪の手入れをするフットケアワーカーの武蔵加乃子さん
 

 足の爪を健康な状態に整え、保湿などのスキンケアやマッサージを行う「フットケア」。足の健康に気を配ることで転倒を防止し、日常生活動作の維持、向上につなげる。これまで見過ごされがちだったが、ケアの重要性が知られるようになり、介護予防の観点から積極的に導入する高齢者施設や自治体も出てきた。(馬場恵)

  3月半ば、盛岡市西松園1丁目のディサービスかたらいの家・ゆう(山谷眞行所長)では、入所者の88歳の女性が、フットケアを専門に学んだフットケアワーカーの武蔵加乃子さん(53)に足爪の手入れをしてもらっていた。湯で足を温めたあと、爪と皮膚の間の角質を綿棒で丁寧に清掃。厚くなり過ぎた爪をニッパーや電動やすりで真っ直ぐに整えていく。ケアは約1時間。「気持ち良かったですか」との問い掛けに、女性は笑顔でうなづいた。

  3年ほど前から施設を利用する、この女性の足の爪は、長年の立ち仕事などの影響で変形。親指の爪が、天井を向いて、そり返って伸びるなど、施設職員も初めて見る痛々しさだった。歩くのにも苦痛を伴っているようで、転倒事故を心配した施設職員が家族と話し合い、フットケアのプロに相談。フットケアワーカーによる訪問ケアと職員らの日常的な手入れで現在は、健康な状態に近づいた。

  同施設では、他にも2、3人がフットケアワーカーのケアを受けている。生活相談員の山谷恵子さん(58)は「爪が改善されたことで、足の指でタオルや新聞紙をつかむリハビリ体操にも意欲的に参加する姿が見られる。できるだけ最期まで自分の足で歩いてもらいたい」と話す。

■高齢者の多くに足のトラブル

  フットケアの普及に取り組む、盛岡市の生きがいづくり研究所の折笠無我代表(43)によると、高齢者の足爪の変形や水虫、たこ・魚の目といったトラブルは珍しくない。痛みで歩くのがおっくうになり、歩行機能が低下。痛みをかばって歩くと、足裏にうまく力が伝わらないため、転倒の原因にもなる。けがなどで動けなくなると、生活機能は、さらに低下していく。

  介護関係者らの実感としては、施設を利用する高齢者の6割程度、在宅療養の高齢者は、さらに高い割合でトラブルを抱えている。折笠代表は「爪を改善するだけで、転ばずにすみ、自分で歩ける人はもっと増えるはず。周りの人が気付いてあげることが重要」と語る。「高い技術持ったフットケアワーカーを育てるだけでなく、高齢者の足に気を配れる介護者を増やし、すそ野を広げる活動に力を入れていきたい」という。

■足のケアに注目する自治体も

  東京医療保健大学の山下和彦教授のグループは2014年度から16年度にかけ、一関市藤沢町と盛岡市で、高齢者82人を対象にフットケアを実施し、下肢筋力に与える影響を調査した。フットケア介入前と介入後で足指力の平均値は1・1〜1・2倍向上、膝間力は外転が低下したものの、内転は1・2〜1・9倍向上した。体のバランスと最も関わりが深い足圧分布は、全体の約7割に何らかの改善が見られた。

  一関市藤沢町では、同市国民健康保険藤沢病院が糖尿病患者らを対象にしたメディカルフットケアに力を入れている他、同市病院事業ふじさわデイサービスセンターは介護予防事業の一環として、利用者がフットケアを受けられる体制を整えている。

  同センターの主任生活相談員小野寺睦美さん(41)は「転倒予防として足の筋肉を鍛えることだけに目を奪われがちだが、体を支える土台となる足底圧が安定していないと効果は期待できない。足爪など足の状態をアセスメントすることを標準化すれば、より効果が高い介護予防事業になると思う」と話した。

※フットケア

  厚労省は2003年度から介護予防・地域支えあい事業に「足指・爪のケアに関する事業」を盛り込み、高齢者やその家族に、足指や爪のケアの重要性と適切なケアの方法を普及するとした。

  爪自体に異常があったり、爪の周りの皮膚が炎症を起こしたりしている場合や、糖尿病などの病気で専門的な管理が必要になった場合のケアは医療行為に当たり、医師や看護師が行う。

  足の手入れに関する民間の専門資格はいくつかあり、このうち、メディカルフットケアJF協会認定のフットケアワーカーは県内で22人。折笠代表らのグループは5人のフットケアワーカーで月に約130人のケアを手掛ける。ケア料金は1回5〜6千円程度。生きがいづくり研究所への問い合わせは電話656―7387へ。


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