盛岡タイムス Web News 2017年  6月  10日 (土)

       

■ 〈体感思観〉: 編集局 馬場惠 ケアマネの協力で免許返納




 沿岸のまちで一人暮らす父親に、ついに運転免許を返納させた。主治医の指示にも耳を貸さず「まだ大丈夫」と息巻いていた父。返納の決め手は、父の介護サービスを調整しているケア・マネージャーの協力だった。

  長く自営業を営んでいた父は、物忘れが目立っても友人知人との会話はかみ合う。運転も問題なさそうだが、とっさの判断ミスで事故を起こさないとも限らない。

  担当の女性ケアマネさんは「車がないと絶対に困る」という父の言い分を丁寧に聞いた上で「困っていることを警察で訴えましょう」と説得。気持ちが変わらないうちに、と私を含め3人で警察署へ向かった。

  交通課の警察官にも協力を依頼。耳が遠い父に分かるよう大きな声でゆっくり免許返納の必要性を説明してもらった。付き添いが娘だけだったら、父は怒って席を立っただろう。だが、ケアマネさんと若い警察官の前で子どもじみた態度も取れず、渋々、返納を承知した。

  移動手段を失った父のため、ケアマネさんは、ボランティア団体が被災地の高齢者のために運行している無料お買い物バスを見つけ、乗車できるよう調整。楽しみだったゴルフの打ちっ放しを続けられるようタクシーの割引利用の可能性も探ってくれた。仕事とはいえ、頭が下がる。

  父は納得したわけではなく、免許返納翌日には「やっぱり免許を返して」と警察署に直訴。さらに「電動自転車」を購入し周りをはらはらさせている。一方、車に頼らずに済む趣味を見つけなければとの思いもあるのだろう。母が亡くなる前は、手付かずだった庭の畑にトマトの苗を植えた。

  家族だけで高齢者を支えるのは限界がある。困った時、助け合える地域の環境が必要だ。誰もが自分事として向き合わなければならない課題だと痛感している。


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