盛岡タイムス Web News   2017年  9月  16日 (土)

       

■ 〈体感思観〉 編集局 戸塚航祐 チョウの羽ばたきを思う


  記者は小さな物事が他者に及ぼす影響として、「バタフライ効果」という言葉を思い出す。簡易に説明をすれば「チョウが羽ばたく程度の小さな影響が、遠い場所の気象に影響を与えるのか」ということで、映画や小説などで知る読者も多いだろう。

  このバタフライ効果を改めて意識したのは、盛岡地裁での公判だった。毎日のように民事・刑事問わず複数の裁判が行われ、記者は傍聴席で弁護人や検察の言葉を聞く。ふと、傍聴席で涙を流す女性の横顔が目に映った。涙の意味は分からないが、流れる涙の一滴は記者の心に小さな波を立てた。

  記者が感じたのは、公判の様子が一般の読者に伝わった時の影響の重さだった。「考え過ぎ」と考える人もいるだろうが、不特定多数に与える影響を決して軽視してはいけないと感じた。

  不特定多数への影響を改めて考えたとき、頭に浮かんだのは窃盗罪の万引き行為だった。万引きは刑法上に表現がなく、「10年以下の懲役もしくは、50万円以下の罰金」という刑罰が与えられる犯罪行為だ。加害者はもちろんのこと、直接関係のない加害者の縁者にも影響が出る可能性がある。

  被害者側への影響も大きい。例えば書店の万引き被害は、2002年10月の経産省の調査で1店舗当たりの年間被害額は212万円。警備費用やセキュリティー強化などの投資を考えると、被害額以上の影響が発生している。

  近年相次ぐインターネットへのゲームなどの違法アップロードも連鎖的な影響が起きている。ヒット作を出しても違法に世の中に出回ってしまえば、本来は制作会社などが受け取るはずだった利益を減じる。ヒット作を出しても、倒産してしまう会社も後を絶たないのが現実だ。

  傍聴席で涙を流していた女性は、記者に影響を与えたと思いもしなかっただろう。しかし、影響は確かにあった。チョウの羽ばたき程度の小さな影響でも人の心に影響を与えると自覚した一瞬だった。


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします