盛岡タイムス Web News   2017年 10月  14日 (土)

       

■ 〈体感思観〉 編集局 馬場恵  原発 自分事として考える


 

 東日本大震災から6年7カ月が過ぎた。2月に東京電力福島第一原子力発電所の20`圏内を視察するツアーに参加。先月は宮城県の石巻市と女川町にまたがる東北電力女川原子力発電所の施設見学会に同行した。二つの原発と地域を見学し、複雑な思いを抱いている。

  福島原発20`圏内ツアーでは浪江町や富岡町の「帰宅困難区域」を視察。現地ガイドの富岡町3・11を語る会の仲山弘子さんに話を聞いた。仲山さんも原発事故に伴う避難指示命令で避難した一人。自宅があった富岡町の中央商店街は、この4月に避難指示が解除されたばかりだ。ツアーで訪れた2月、6年放置されたままの商店は痛々しい姿をさらしていた。

  「雨漏りで天井が剥がれ、畳が腐り、6年かけて、あした帰るつもりだった自分の家が、じわじわ壊れていく。震災はもう終わったと思っている人も多いでしょう。とんでもない」

  避難指示が解除されても、全ての住民が戻って来るわけではない。仲山さん自身も、自宅の修理が追い付かず、すぐに帰れる状態ではないと話していた。

  同じ住宅地でも道一本隔てて立ち入ることができない「帰宅困難区域」がある。より原発に近い国道沿いには、除染後に出る放射性廃棄物が詰まったフレコンバッグが黒いピラミッドにように積み上がる。

  「『新興』というならともかく、『復興』という言葉は使ってほしくない。絶対に昔とは同じには戻らない場所ですから」と仲山さん。安全と言われ、町の経済も潤してきた原発だが、いったん事故が起きれば、その代償はとてつもなく重い。

  福島第一原発の事故後、国は原発の安全規制を強化。大震災で1〜3基全てが停止している女川原発は再稼働を目指し大規模な安全対策工事が進む。全長800bの防潮堤は海抜29bにかさ上げ。大容量の電源装置、25bプール約20杯分の淡水をためられる巨大貯水槽など、全電源が喪失し、原子炉を冷却できずに惨事を招いた福島第一原発事故の教訓を踏まえ二重、三重に対策が進む。

  日本のエネルギー自給率はわずか6%。火力や原子力、太陽光・風力といった再生可能エネルギーをバランス良く活用しなければいけない。エネルギーの安定供給のため、原子力発電を現段階で止める選択はないという理屈も分かる。

  ただ、コストが低く、クリーンで効率的なエネルギーと言われる原発を維持するための資金と労力は膨大。使い終わった核燃料は再利用を重ねたとしても、最終的には地下など生活域から遠く離れた場所で管理し続けなければならず、その場所も技術も不確定だ。

  電気に支えられた便利な暮らしに甘んじながら、日本のエネルギーのあるべき姿を真剣に考えてきただろうかと反省する。原発の是非も今回の選挙の争点の一つ。一人ひとりが自分事として考えるべきだろう。


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