盛岡タイムス Web News   2017年  12月  15日 (金)

       

■  国際有機農業会議 雑草抑制の研究でイノベ賞 カバークロップ用い無農薬 東北農研センター 内野宙主任研究員(39)


     
   科学賞のトロフィーを手にする内野宙さん。「有機農業の世界では持続可能な社会への貢献が盛んに議論されている」  
   科学賞のトロフィーを手にする内野宙さん。「有機農業の世界では持続可能な社会への貢献が盛んに議論されている」
 

 盛岡市の農研機構東北農業研究センター畜産飼料作研究領域の内野宙主任研究員(39)=農学博士=は、土壌の表面を覆う力が強い植物(カバークロップ)を用いた雑草抑制の研究で、第19回国際有機農業会議・有機農業イノベーション賞(科学賞)を受賞した。有機農業に関する革新的な業績を挙げた研究者や団体に対して授与される国際的な賞で、日本人の受賞は初めて。「日本の有機農業は、まだマイナーだが、小規模でも真面目に取り組む生産者のため、少しでも貢献できれば」と意欲を燃やす。

  同会議は世界90カ国が参加する国際有機農業運動連盟(IFOAM)が3年に一度、開催。第17回会議から、有機農業に関する革新的な業績に対して大賞と科学賞を選出している。先月、インド・ニューデリーで開かれた第19回会議には、研究者をはじめ、生産者、企業関係者ら3千人余りが参加。有機農業の最先端の知見や社会貢献について議論した。

  内野さんが取り組んできたのは、カバークロップと雑草、主作物との農地での競合関係を利用し、無農薬で雑草を抑制する農業技術。学術的な研究にとどまらず、実用的な栽培体系を構築した点が高く評価された。

  「イタリアンライグラス」(秋まきのライ麦)をカバークロップに利用した飼料用大豆の栽培体系では、4月上旬にイタリアンライグラスの種をまく。秋まきのライ麦は、低温時期がないと出穂しない特性があるため、草丈が低いまま土壌を覆い、雑草の生育を阻む。

  6月、イタリアンライグラスをいったん刈り取り、大豆の種をまく。大豆の発芽、成長と同時に、再生力に優れるイタリアングラスは再び地面を覆って雑草を抑える。夏、高温に強く、草丈も高い大豆は、さらに成長するが、高温に弱く、草丈も低いイタリアングラスは衰退。秋には大豆だけが残り、飼料用農業機械で効率的に収穫できるという流れだ。

  イタリアンライグラスと飼料用大豆の両方を収穫できるため、輸入に頼る乳牛用の高タンパク質飼料を無農薬で自給することにもつながるという。

  バレイショ、大豆、トウモロコシをモデルに4年間にわたって試験栽培し、効果を実証。現在、他県の農業研究センター数カ所が栽培技術として採用している。

  カバークロップを使った雑草抑制の研究は、北大の大学院生時代から10数年間、続けている。実用化するには作業の手間、コスト、既存機械の活用など、あらゆる面を検討する必要があり「農家に使ってもらえる技術に仕上げるのが一番難しい」と話す。主作物の収量の安定性など課題はまだあり、さらなる改良に挑む。

  将来を見据えると、食糧自給率の向上は日本の大きな課題。「多様な農業体系があっていい。有機農業、化学的農業、双方の良いところを取り入れながら、良い形が見いだされていくといい」と語る。

  ■うちの・ひろし

  北海道大農学部博士課程卒、同大大学院農学研究院学術研究員、特別研究員を経て2009年5から10年9月まで国際半乾燥熱帯作物研究所 (インド)博士研究員。10年10月から農研機構東北農業研究センターに勤務。千葉県出身。


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