盛岡タイムス Web News   2018年  1月  25日 (木)

       

■  県内の求人 正社員は“狭き門”? 倍率1倍台が最長更新中も… 全国に比べ低水準 労働力流出の加速懸念


 岩手労働局によると、11月の県内の有効求人倍率は1・44倍。4年7カ月連続1倍台で過去最長記録を更新し、今後の上昇も予想されている。一見すると雇用状況は順調に改善しているように見えるが、パート・アルバイトを除く、正社員に限った有効求人倍率は0・90倍にとどまる。全国平均1・09倍との開きも見られ、県内の新規求人の約4割が非正規雇用。3次産業が多い県内の産業構造が影響しており、アルバイト・パート労働者の比率の高さは県内の平均所定内給与(基本給)を引き下げ、一人当たりの労働時間を押し上げている懸念がある。(飯森歩)

  正社員対象の有効求人倍率で1倍台に至ってない都道府県は、全国に15県。東北では岩手と青森のみ。岩手においては、リーマンショック後の2009年5、6月に0・12倍の最低値を記録してから7年8カ月連続で前年同月を上回っているが、全国と比べると低水準が続いている。

  その背景には、県南地域の製造関連企業の集積や、小売業・サービス業などの3次産業企業が県央部に多いことにある。経済センサスよると、盛岡市内の事業所の約8割は第3次産業。製造業の正社員雇用は景気好調や人手不足の影響で増えつつあるが、小売業やサービス業の非正規労働者募集は依然として多い。

  一方で、非正規から正規雇用に切り替えて募集しても、労働時間や給与などの待遇条件が求職者の希望に満たず、採用に至らないケースも多いという。求人の待遇、給与条件を上げると、他の社員の労働条件も調整しなければならず、中小企業ではそれが難しいとの声も聞かれる。

  時間外労働が認められないパート勤務者が多いことで、業務が正社員に転嫁され、それが長時間労働につながっているという懸念もある。県内の30人以上規模事業所で、従業員1人当たりの年間総労働時間は1728時間。全国平均より97時間多く、都道府県別に見るとワースト5位。01年度の1911時間から改善しているが低水準は変わらない(厚労省の毎月勤労統計調査より)。

  非正規労働者の比率の多さの影響からか、県民一人当たりの平均月所得も22万1642円で、全国平均より4万3千円低く、全国ワースト4位(厚労省「16年賃金構造基本統計調査報告」より)。収益をすぐに賃金に反映させられない中小企業が多いのが背景にあり、労働者が県外に流れる要因にもなっている。

  同局職業安定部長の清水達哉部長は「昔から続く厳しい労働環境への耐性、我慢強い県民性も理由にある」と分析。「毎年1万人が県外に流出している。働き方改革が都市部で進むほど、ますます県外に労働力が流出する。それを食い止めるためには、労働時間を短縮させ、生産性を上げる各企業の取り組みが必要」とした。

  同局では、働き方改革支援として各種助成金▽職場意識改善▽キャリアアップ▽仕事と家庭の両立支援等▽業務改善▽職場定着支援▽人事評価改善等―などを実施している。

  スーパーを展開するベルジョイス(盛岡市)は、18年春卒大学生の採用数が目標の半分にも至っていない状態。人材確保が厳しさを増す中で中途採用確保に予算を割き、2年前からパート労働者の正社員転換を強化している。今年は約20人が嘱託・正社員になる予定。パートのシニア採用も始め、自給も土日祝日の加給、過疎地区での引き上げなどを行っている。

  菊池甚成常務は「18年4月以降は、パート・アルバイト労働者が正社員と同様に定年まで働けるようになる。そうした人材が社員へのキャリアステップを踏めるようマネジメントや店舗運営などの教育を行い、一人当たりの生産性を高めていきたい。今、働いている従業員が長く勤められる職場にすることが、将来の人材確保になると考えている」と話していた。

  工業用プラスチック製品製造業のニュートン(八幡平市)は、今年度の新卒者の募集で初めて3次募集を行った。こうした新卒者確保の困難さを予想し、10年ほど前から工場勤務のパート社員の正社員転換を進めている。

  田面木哲也社長は「人が働く意義を問われる過渡期。ただ指示された通りに動く人材は、いずれAI(人工知能)に代用される。製造の先にある顧客のニーズを把握し、自社の目標と照らし合わせて商品を考案できる思考力をつける教育を進め、生産性を高めていければ」と話していた。


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